「自分でも驚おどろいたことに、泣きながら観ていた。
『秒速5センチメートル』を作っておいて良かったと、心から思えた。」
― 新海誠まこと（原作）

1991年、春。
東京の小学校で出会った貴樹たかきと明里は、互たがいの孤独こどくにそっと手を差し伸のべるようにして、少しずつ心を通わせていった。
しかし、卒業と同時に、明里は引っ越こしてしまう。
離はなれてからも、文通を重ねる二人。
相手の言葉に触ふれるたび、たしかにつながっていると感じられた。
中学一年の冬。
吹雪ふぶきの夜、栃木・岩舟いわふねで再会さいかいを果たした二人は、雪の中に立つ一本の桜さくらの木の下で、最後の約束を交わす。
「2009年3月26日、またここで会おう」

時は流れ、2008年。
東京で働く貴樹は、人と深く関わらず、閉とじた日々を送っていた。
30歳さいを前にして、自分の一部が、遠い時間に取り残されたままだと気づきはじめる。
そんな時にふと胸むねに浮うかぶのは、色褪あせない風景と、約束の日の予感。
明里もまた、あの頃ころの想い出と共に、静かに日常にちじょうを生きていた。
18年という時を、異ことなる速さで歩んだ二人が、ひとつの記憶きおくの場所へと向かっていく。
交わらなかった運命の先に、二人を隔へだてる距離きょりと時間に、今も静かに漂ただようあの時の言葉。
――いつか、どこかで、あの人に届とどくことを願うように。
大切な人との巡めぐり合わせを描えがいた、淡あわく、静かな、約束の物語。

公開日：
2025年10月10日(金)
全国劇場にてロードショー