喫茶店の菊川さん
僕は坂本 空(さかもと そら) よく通ってる喫茶店の店長に恋をしてる 一目惚れだった 店長は素敵な人 長い1つに結んだ髪、柔らかい曲線を描く腰に 優しい瞳、穏やかな声 店長の名前は菊川 怜(きくがわ れい)と言う 彼女の煎れるコーヒーはとても美味しい 一つ気になるのは、右目を髪で隠しているって事、なんだか知らなくていい事だけど気になって仕方ない 「ああ、いらっしゃい空くん」 「菊川さん来たよー、コーヒー下さい」 「はーい」 コーヒーを飲みながら雑談をする この何気ない時間が好き 外は雨が降っていて、紫陽花が雨に打たれていた 「…まずいなー」 「え!え!?コーヒー不味かった?」 「えぁ!?違います!その…傘持ってきてなくて…」 「あ、なんだぁ…よかった」 よかった嫌われなくて 「紫陽花が綺麗だねー、あっカタツムリ」 はしゃぐ菊川さん…目に入れても痛くないな …なんてキモくて本人には絶対言えない …今は二人きり…聞いてみようかな、右目の事 「空くん」 「はい」 「…やっぱり右目の事気になる?」 一瞬心を読まれたかと思いドキッとした 「え…まあ…はい、出来れば聞いてみたいと思ってました」 やっぱりといった顔をしてから、何かを決めたような表情でこちらを向いた 「よく右目を見てるから気になってるんだろうなって思っていたんだ、空くんになら見せれるかな」 菊川さんが前髪を手でずらした、初めて菊川さんの右目を見た 「ん…こういう事なんだよね」 「…え?」 右目には色がなくて右目だけ僕と目が合ってなかった なんていうのかな…右目だけ死んでた 「これね、生まれつきでさ…皆怖がってしまうから、髪で隠してたんだ」 「治らないんですか?」 「摘出とかでなんとかなるらしいけど、母さんがくれた目だからさ、なかなかできなくて」 菊川さんは右目を優しく撫でた 「…なんで、話してくれたんですか?僕が怖がって来なくなるかもなんて…考えなかったんですか?」 菊川さんはクスッと笑って 「空くんはそんな事しないって思ってたから」 と言った 胸の鼓動が早くなる 「…なんで、そんな風に信じてくれたんですか…?」 菊川さんは少し赤くなって、うつむいた 『…それ…言わせる?私は空くんから言って欲しいな』 ―ドクンッ あぁーもうっ言ってしまえ! 「―っ…僕は…菊川さんが好きです…付き合って下さい!」 「…よろしくお願いします」 顔が熱い、きっと真っ赤なんだろうな でも、菊川さんも真っ赤だしお互い様か 外は既に晴れていて、紫陽花が輝いていた 飲みかけのコーヒーが少し揺れた