夏の夜空に浮かぶ花
「また君とあの『夏の夜空に浮かぶ花』が見たいなぁ。」 私はそう思いながら、今日のお祭りを病室の窓から見ていた。 私は、百瀬 翼(ももせ つばさ)。小さい頃からがんに悩まされてきた中学2年生。 私には、毎年元気がよくなる7月頃に病院近くの神社でお祭りが開催されている。沢山の屋台や沢山の遊び… 私はそんな夏祭りが大好きだった。今年も行きたかったなぁ。 今年は、病状が悪いので、病室の窓からお祭りを眺めることしかできない。 大雅「百瀬!大丈夫か?」 あ…。大雅くん…。どうしたの…? 彼は、私の大好きな彼氏くんで、毎年夏祭りは彼と言っていた。まさか、今日来てくれるなんて、嬉しいなぁ…。 大雅「ほら、百瀬の好きだった、射的で百瀬が好きなくまのぬいぐるみだぞ。最近お前の持っていたぬいぐるみが破れちゃったって聞いた から。大切に使えよ。」 大雅くんは本当に優しい。小学生の頃は少しヤンキー気質でみんな苦手っぽかったけど、私は大雅くんと幼馴染だったから、こんなの 慣れっこだったし、大雅くんが本当に優しいの知っていたから、みんな大雅くんと仲良くしてくれた。 私は小4の頃から学校には来れなくて、大雅くんにも会えないのかぁ。って思っていたけど、私のママが大雅くんのママに連絡入れてたから、 私の入っている病院によく来てくれている。手術の日や休日は一日中いることが多い。 中1の夏休みに大雅くんが、私に告白してくれた。 嬉しくて飛び跳ねちゃいそうだったけど、体が痛くて動かせなかった。でも、カップルになることができたよ。 毎日楽しくて、大雅くんのおかげで沢山のことをすることができた。 毎年のように病院の近くのイベントに言って、二人で「楽しいね。」っていうのが、幸せだった。 でも、その幸せは長くは続かないそうだ。 最近は病状が悪くなり、手術が毎日のようにあって、大雅くんには悲しませたくないから、黙っていたけれど。 大雅くんと私の生きられる最期の日まで一緒にいるって決めたから。死ぬまで絶対に病状が悪化してるなんて言わない。 そう決めたんだ、私は。 大雅「なぁ、百瀬。最近顔色悪くないか?病状が悪化しているのか?大丈夫じゃないなら、絶対言えよ。」 翼「あー。だ、大丈夫だよ。今日の病状の悪さもたまたまだし。もうすぐ良くなると思うってお医者さんも言っていたし。」 私って嘘ばっかりだ。彼氏にだって嘘ついちゃう馬鹿者なんだ。 ヒュルルルルル…ドーン! 大雅「あ、ほら。百瀬。お前の好きな花火じゃん。今年もきれいだなぁ。病室がお祭り会場のすぐ近くで良かったな。 はぁ。本当に良かったわ。今年も二人で見れて。来年も見れたら良いな。」 翼「…。もう、決めた。ねぇ、大雅くん。私、嘘をついていたんだ。」 大雅「え?何?聞かせてよ。どんな嘘をついていたの?」 翼「…。私、余命宣告されたんだ。」 大雅「!?……。もう、一緒にいれる時間は少ないってことだな。ごめん、辛くなることばかり言って。」 翼「え?いや、大雅くんは悪くないよ。悪いのは、嘘をついていた私だよ?本当にごめんね。 大雅くんが沢山優しくしてくれると、嘘をついている自分の胸が痛くなって、私は嘘をついているのがやっぱり辛いなって思ったから…。」 大雅「百瀬。ほら、俺は百瀬が生きてくれる最期の日まで一緒にいる。絶対に一緒にいるから。お前が元気にならなくても、 絶対に一緒にいるから。ほら、ゆびきりげんまん。もう、嘘つかない。」 やっぱり私は嘘をつかなくても大雅くんと一緒にいれるんだ。本当に私は幸せ者。 今日も『夏の夜空に浮かぶ花』がきれいに咲いている。