彩り
箱を開き、中身を出し確認する。いらないものと必要なものにまとめ、新たな箱を開ける。中に入っていた、スケッチブックに目が止まった。これは学生時代のものか。まだ、持っていたのか。 これの持ち主は今は亡き妻である。学生時代いつも教室の隅でスケッチブックに何かを書いていた彼女が気になって、僕は声をかけた。頼めば彼女は快くスケッチブックを見せてくれた。濃い藍色の線の隣に「夜空色」水色の隣に「快晴色」などと書いてあった。 聞けば、彼女の趣味だという。色に名前をつけているのだと、彼女は朗らかに答えた。 そんな彼女に興味がわいたので、「これは何と呼ぶんだい」「この色は」などと質問していたら、僕らは仲良くなり、大学を卒業した後に僕はプロポーズをした。それを境に僕が着ていたタキシードのような黒を「お婿さん色」彼女が着ていたウェディングドレスのような白を「お嫁さん色」と呼ぶようになった。 それからは妻が色の名前を決めるのではなく、二人で埋めていった。ピンクは恋色。銀は結婚指輪色。 僕が赤は何と呼ぶのかと問えば、妻は「鮮血色」と答えた。 鮮血。つまり血。なぜそんな物騒な名にするのかと聞けば、1ヶ月後に教えるといった。1ヶ月後の朝、彼女に聞いた。「それはねぇ…」 僕が答えを待っていると、妻の口から血が吐かれた。「鮮血色」に染まる妻の服。青ざめる僕の顔。 妻は、病に侵されていた。わざわざ1ヶ月後まで待たせたのは、余命があのときには1ヶ月であったから。鮮血色の由来は自身が吐いていた血の色であったから。全てが、繋がった。体を激しい電流が駆け巡るような衝撃を受けた。 スケッチブックには未だに、赤い線の横に文字がない。裏表紙に書かれた妻の旧姓に二重線が引かれ、僕の苗字に書きかえられているのを見て、必要品にまとめた。遺品整理もこれで最後だ。
みんなの答え
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面白かったです!
話に引き込まれるような文章でした。 会話文が多過ぎでも、少なすぎでもなく、大変読みやすかったです。 あ、これからあとは、ちょっと読んでいて思ったことを。 「青ざめる僕の顔」 という文章なのですが…。 この物語では、“僕”視点なのに、何故“僕”は、僕の顔が青ざめるのを認識したのでしょう? 鏡を通して見たならば、分かりますが。 この物語は多分、一人称なのですから、「僕の背筋が粟立った」「僕は凍りついた」などの表現が適当かと思います。 しかし、設定や文章、言葉の選び方などはとても魅力的だと思いました! 面白い作品、ありがとうございました!