希望の花
引き出しを整理していたら、古い日記帳が出てきた。 『日記 3年4組 みやざわ ゆきの』 なつかしい日記だった。3年生だから、今からもう5年も前になる。今見ると少しへたっぴな、でも丁寧に書かれた名前。鉛筆や消しゴムのかすで少し汚れた表紙を、そっとめくった。 『11月1日 月曜日 お母さんが、スノードロップのきゅうこんをもって帰ってきました。お母さんはスノードロップの花がすきです。うちのうらにわにうめました。明日からはわたしが一生けんめい育てます。』 『11月2日 火曜日 お母さんにやり方を教えてもらって、スノードロップを育てています。…』 書いてあるのは、ほとんどスノードロップとお母さんの事だった。毎日毎日、休日でも休みなく、スノードロップの様子が記されている。『お母さんにおこられました。お水はあげすぎるといけないそうです。』『葉っぱがのびてきました。』『つぼみがついていました。』…冬になり、2月になると、育ってきた様子が嬉しそうな字で記されている。『2月18日 きのうまでつぼみだった花が、朝見たらひとつさいていました。お母さんが帰ってきたら見せてあげたいです。早く帰ってこないかな。』…次のページは、真っ白だった。一日も休まず書かれていた日記が、19日は何も書かれていない。その代わり、雫を落としたように、ページがしわしわになっていた。次も、その次も。 黙ってページをめくる。 『2月22日 前に、スノードロップは「死の象徴」だと、本で読みました。でも、お母さんにきいたら、「スノードロップはね、きぼうの花なのよ。」と言いました。わたしはこれからも、スノードロップを育てます。はじめてのつぼみは、おし花にします。お母さんの言った「きぼう」にしたいです。』 ふっと目を覚ますと、もう空が明るくなっていた。日記を読みながら寝てしまったらしい。 外に出て、裏庭のスノードロップを一輪だけ摘んだ。 家に戻り、居間に入った。仏壇に向かう。そばの小さな花瓶に、摘んできたスノードロップを活けて、仏壇の前に正座する。 無色だった雪に、自分の色を与えたスノードロップ。お母さんも、私に希望を与えてくれた。 確かに、死の象徴も間違いではないかもしれない。でも私にとって、スノードロップは希望の花だ。自分に希望をくれた母のように。 希望を与えてくれて、ありがとう。 微笑む母の遺影に呟いて、そっと手を合わせた。
みんなの答え
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あああああ………
お母さん帰ってこなかったの………? でも、たしかに、スノードロップの花言葉は『希望』と『あなたの死を望みます』なんだって
お母さん…
お母さん帰ってこなかったんだ… 感動しました!