人間と、
「………ねぇ、私に見覚えとかない?」 「…無いけれど、どうかしたの?」 そんな事を言われても、見覚えなんてないので。 だから目の前に居座る女にそう言えば、女は目を見開いたのち、いつもの快活な表情からは想像できない程儚げで寂しそうな笑みを浮かべた。 初めてみせられたその表情に私が固まっていると、女は何事もなかったかのようにまたいつもの快活な表情を顔に貼り付けて、笑った。 「いや、なんでもない!ちょっと揶揄っただけだよ!」 女がどう思いその笑顔を貼り付けたのかはわからないけれど、それをただの揶揄いだと本気で捉えてしまうほど私の頭は悪くない。 この女が、私の知らない私のことを知っていることは明確だった。 なんとなく。この女はもうこれ以上ここに居座る気が無いような気がした。前々から決めていたことを、最後の迷いを私の答えで振り払い望みを消し去ったのだとしたら。 伸ばした手が空を切る前に、女が消えてしまう前に、そう思い女に伸ばした手は届くことなく。 彼女の透き通った腕の先にある空を切った。 ーーーー 設定 私→人間。女のことは忘れてしまっている。幽霊(ただし‘女’のみ)が見える 女→幽霊。ずっと昔に‘私’に世話になった。何か目的があり、‘私’にずっと引っ付いている