始まりも、終わりも。
いつものカフェの入り口。もう彼はここに来ない。なのにいつもの習慣で待ってしまう。 あたしは昨日、彼に別れを告げられた。去年から付き合っていて、お似合いだと言われていたあたし達。なのに先週、ちょっとした誤解からケンカになって、結果破綻した。 「はあ・・・」 「よっ」 不意に声をかけられ、見上げれば見たくもない顔。彼ではない。あたしが浮気したと彼が誤解した相手だ。 「何ボーっとしてんだよ」 言いたくなかった。でも、先週の痛みはまだ続いていて。 「あんたのせいで、」 言ってしまった。とたん、去年彼からこのカフェで告白された思い出が、フラッシュバックする。 「別れたんだよ」 誰と、とは言わなかった。視界がにじんだ。嫌だ、嫌だ。こんな所で泣きたくないのに。 恥ずかしくなって中に入った。あいつも一緒に後から続く。 浮気相手と誤解された相手と入るのは、皮肉にも先週別れを告げられた場所、すなわちカフェ。始まりも、終わりもここだった。と思うとまた涙が出そうになる。 「なあ、元気出せって」 出せない。一人ぼっちの気分で、惨めだった。しかもこいつに泣き顔を見せるなんて。こんないじめ、あるだろうか。 「おい、よかったらさ」 顔を上げた。すると、目の前のあいつは急に真剣な顔になった。どきっとした刹那。 「俺が、あいつの代わりになれない?」