いじめと敵討ち
消しかすを頭にかけられ、パシリにされ、その挙句、平手打ち。柚香(ゆずか)さんが受けていることだ。 柚香さんはいつも暗い表情をしている。 僕は担任の松村(まつむら)先生にいじめのことを言いに行った。松村先生はいじめっ子の未花(みはな)さんたちを叱ることもせず、柚香さんを助けることもせず、柚香さんに寄り添うそぶりすら見せなかった。 僕が不快な思いをしているうちに、決定的なことが起こった。 夏休みの前日のこと。クラスメイトが残る教室に未花さんのよく通る声が響いた。その言葉はたちまち教室の空気を凍らせた。 「柚香。あんたなんか生きてる価値、無いんだよ。人間のクズ」 柚香さんは泣かなかった。ただ黙って未花さんを見つめ、俯くと、教室を出て行った。僕は柚香さんを追いかけた。何をしようとかそういうことは全く考えていなかった。でも、柚香さんの後を追った。 柚香さんは保健室のドアに手を掛けると、僕を見つめた。泣きそうだった。目が潤んでいた。 柚香さんは口を開いた。声が泣いていた。 「もしかして、励まそうと思ってた?なら、ごめんね。私、もう家に帰る。未花さんたちによろしく言っておいてよ」 そう言うなり、保健室に素早く入った。 養護教諭の石神(いしがみ)先生が柚香さんに話しかける。 僕は閉まったドアを見つめて、教室に戻った。 夏休み最終日。 僕はマンションの一室から下を覗いた。 夏休み最終日は自殺者が多いと言う。学校に行きたくない人たちが死を選ぶからだそうだ。 残酷だと思う。 僕はテレビの方を向いた。 ニュースはいじめで中学一年生が死んだことを伝えていた。自殺した当時、中学一年生。僕の一個下だ。 その中学一年生は欠席した翌日に登校すると、自分の机に花瓶と寄せ書きが置いてあった。寄せ書きには教師四人からのメッセージもあった。アナウンサーがむごいとか酷いとか言う。 ハーフの女の子が親のことを言われたり、一人ぼっちで給食を食べたり、上靴にうざいなどと書かれ、自殺。 他にも自殺のことが報じられる。今日だからこんなにも報道されるのだろう。夏休み最終日だから。 アナウンサーが痛ましいなどと言う。 学校側の対応などが報じられ、アナウンサー、コメンテーターが顔をしかめた。 僕は再び、下を見た。その時だった。上が騒がしくなった。 ん?僕がいる部屋は最上階だ。つまり、上は屋上。 僕は階段を上り、驚いた。 柚香さんが飛び降りようとしていた。柵を掴み、自殺を止めようとする大人たちに反論する。その大人たちの中には柚香さんのご両親も含まれていた。 なんでこうなんだろうと僕は思った。大人たちはいつもこうだ。ギリギリになって初めてことの大きさに気づく。事実を隠蔽する。保身に走る。上っ面だけのことを語る。ドラマや映画に出てくるような熱血教師を僕は見たことがない。担任の松村。あいつこそこの典型だ。もし、柚香さんがこのまま死んでも自分のことばかり考えて適当なことを言うんだろう。いじめなんてなかったと言うんだろう。つまり、柚香さんが死んでもいい思いをするのは未花さんたち。いじめの加害者は特定されてるけどその程度。裁判を起こして勝っても長期戦に持ち込まれ、結局は遺族の粘り勝ち。 僕は大人たちを掻き分けて、一番前に立った。 柚香さんが目を見開いた。 「あのさ。柚香さん、今までに起きたいじめが原因の自殺。いじめられた人が死んで、家族が学校とかに苦しまなかった事件、知ってる?僕は知らない。だから、死んでも苦しむのは家族だよ。いい思いをするのは加害者たち」 僕は気づいていた。今、この中にその人の親がいることに。だから、言ってやった。 「未花さんたちだよ」 大人の中の一人が奇声をあげた。柚香さんのご両親が奇声を発した大人を睨んだ。他の大人もその人を睨む。気づかないふりをして僕は言葉を続ける。ついでに担任も。 「松村先生は事実を話してくれるかな?多分、嘘をつくだろうね。だから、死んでも未花さんたちは得をするだけ。それを知った上で死にたいと思う?」 柚香さんが柵から手を離した。僕は柚香さんに近づいた。柚香さんにしか聞こえないくらいの小さな声で僕は言う。 「生きたいと思わない?生きて、復讐してやりたいと思わない?」 柚香さんが頷いた。 「ありがとう」 晴れ晴れとした笑みで柚香さんはお礼を言った。その表情を見ながら、僕はなぜか嬉しくなった。死んだ弟の仇を取りたかっただけなのに。もしかしたら、柚香さんに死んでほしくなかったのかもしれない。 開け放った扉の前では未花さんの両親が大人たちに責められていた。特に、柚香さんのご両親はもう怒り狂っていた。慌てふためいてる未花さんの両親の顔を見ながら、僕は嬉しくなった。
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スゴイです。
僕は、自分の弟の敵討ちそして、柚香さんを助けた。素晴らしいです(←偉そう)。私も弟を殴ったヤツに敵討ち、したいです。
すごい!!
おはこんばんにちは! 中1のみたらしだんごです。 大野さん!すごい!同い年なのに! (あ、中2だったらスミマセン) これからもがんばってください!