二つの絵
数字と記憶が頭の中をぐるぐると回る。 やがて、私は一つの答えを得た。 「この二つの絵。題名は君に三つの間違いを。 従姉妹からもらったんだけど、なんでこの絵を二つ、私にあげたのか分からないの。何回聞いても笑ってはぐらかされる」 近衛(このえ)先輩はA4サイズの絵を私に見せた。 「この絵、同じじゃないの」 どこかの村を描いたものなのだろうか。馬、山、稲穂、太陽などが描かれていた。太陽は山に半分隠れ、馬が稲穂を食んでいる。 確かに、この絵は同じ絵に見える。なぜそんな絵を先輩にあげたのかも不思議だが、それよりも不思議なことがある。 「なぜ、私に?私、名探偵じゃありませんし、先輩が所属している美術部の部員でもありません」 「だって、あなた、ミステリとか推理小説ばっか読んでるじゃない。それなら、推理も得意かなって」 そう、満面の笑みで言われちゃあ、断るわけにはいかない。だけど、推理小説を読んでるイコール、推理が得意と思われては困る。 「先輩、私、論理的に謎を解くタイプじゃないんです。直感で犯人はこいつかなって思ってその人が犯人である証拠を集めるタイプなんです。例えば、Aが犯人かなって思ったらAが犯人である証拠を集めるんです。動機や現場に残された証拠そういったものから推理するタイプじゃないんです。動機を示すホワイダニットやハウダニットもそうです。この二つの場合、私はまず犯人を推理してから犯罪を犯した理由、どうやって犯行を行なったかを推理するんです。先輩が名探偵みたいな人に推理してほしいなら私を選んだのはミスです」 「なら、犯人は私の従姉妹。犯人を推理する手間は省けるよ。この場合、動機かな?ホワイダニット。頑張って」 私は考え込んだ。私は今、一週間後の数学の小テストに向けて勉強をしなければならない。だが、近衛先輩は私を手放してくれそうにない。この場合、抵抗するよりも大人しく従って謎を研いだ方がテスト勉強の時間があるだろう。 「分かりました。まず、先輩のことと従姉妹について教えてください」 私はいつも持ち歩いているメモ帳とペンをスカートのポケットから出した。 私は焼いた写真とメモ帳を机に置いた。 写真にはあの絵が写っている。 従姉妹は仕事で海外にいる。 先輩はクイズが好き。 従姉妹はプレゼントを人にあげるときに自分が作ったものや描いたものをあげる人。 あと少しで正解にたどり着きそうなのに、まるで正解に靄がかかっているかのようにそれを掴めない。 ため息をついて、パソコンを起動する。保存したこの二つの絵の写真を拡大する。 三つの間違い。謎解き。クイズ。従姉妹。 あ、と思った。 思わず、顔に笑みが浮かぶ。 答えはあの題名そのままだ。 一枚目の絵と二枚目の絵は違っている。 一枚目の絵は稲穂が緑色で塗られているのに対し、二枚目の絵は黄緑色で塗られている。一枚目の絵の太陽より、二枚目の絵の太陽の方が少し、大きい。一枚目の絵の馬より、二枚目の馬のしっぽが長い。 「なーんだ。推理も何もないじゃん」 先輩はクイズが好きだという。だから、従姉妹はこの絵をプレゼントした。謎解きと同じように、何故自分が先輩に似たような絵をプレゼントしたのか、この絵はなんなのか考えさせた。クイズを出したつもりだったのだろう。もちろん、間違いを探すのもクイズだった。 先輩は分からなかったが、この二枚の絵は間違い探し。似たような絵を二つ、プレゼントしたのはそれは間違い探しだったから。 私は先輩に電話を掛ける。先輩とはすぐに繋がった。 「近衛先輩、分かりました。二つの絵の謎」