短編小説みんなの答え:2

クローバーを摘んで

「絶対に、許さないから」 暗い部屋の中、外で光っている雷によって照らされた空間に女が一人部屋のある一点を睨むようにして立っていた。 だが睨む先に何があるのかは本人しか知らない。 分かる事は唯一つ。その女の両の手には一つのクローバーが握られていたことのみ。 間宮藍子は美大の学生である。 大学ではいろいろな学生が油絵や水彩、造形芸術など多種多様な芸術活動に精を出している。 その中でも藍子は油絵を描くのが好きだった。 好きだった、と言うのには理由があるのだが今、それを言うときではない。 今は専ら水彩絵の具で風景画を描いている。 「藍子さんの水彩画ってなんか寂しいよね。」 「うん。なんていうか、上手だし綺麗なんだけど見てると泣きたくなると言うか、寂しくなるよね。」 「青色ばかり使ってるからかしら。」 「まあ名前にも『藍』が入ってるしね」 「確かに」 昼を少し過ぎた頃、いつものように外で藍子が座りながら風景画を描いていると藍子の右側にそんな話をしながら二人の女が少し距離をつくりイーゼルを立てて黙って絵を描き始めた。30分ほど黙々と描き続けていた二人だったが片方がひそひそと藍子の絵について話しはじめる。 「ねえ。そういえばさ、藍子さんって元々油絵の人じゃなかった?」 「そういえばそうだね。いつからだっけ、水彩画描くようになったの。」 「さあ。あ、あれじゃない?豊島さんと別れたときから。」 『豊島』という声が聞こえた瞬間、藍子は絵筆を握る力を強くする。そんな藍子に気が付くわけもなく生徒はさらに話を続ける。 「ああ、同じ油絵の人の豊島さんか。あれ、あの二人付き合ってたの?」 「え、あんたしらなかったの?結構有名だったよ。美男美女カップルが出来たって。」 「あー。藍子さん結構美人だもんね。豊島さんもイケメンだし。でもなんで別れたの?二人ともそんなに悪い人じゃないじゃない。」 「さあ?噂じゃ豊島さんから別れ話切り出したらしいよ。」 えー、嘘ー。と片方の生徒が笑う。 なによ。何も知らないくせに勝手な事言って。 確かに私と豊島さんは付き合ってたし、別れた。それは否定しないけど、彼が勝手に女を作ったの。私はただの被害者よ。 藍子は心の中でそう弁解するがそんな事を知らない生徒の話は止まらない。 「豊島さんが別れるなんていうとか。そんなに酷い人なの?藍子さんって。そんなふうには見えないんだけど。」 「知らなーい。だって話した事無いし。でも人は見かけによらないって言うじゃない?もしかしたら超性格悪かったりして」 うわ、ありそう。と今度は二人で笑う。 「ちょっと、勝手な事言わないで頂戴。」 そう言おうとして立ち上がるが「あ、もう直ぐ講義始まるじゃん」と言ってそそくさと退散してしまったため叶わなかった。 「全く。」 仕方なしにまた絵を描き始める。近くにはクローバーが落ちていた。何気なくそれを拾う。 そして気づく。 「私も次授業じゃない!」 夕方。天気予報では小雨が降る、と言っていたがまさかのどしゃ降りだった。 しかもゴロゴロと雷も鳴り出す。 藍子は窓越しにそんな天気を眺めていると 「うわぁー。最悪。傘持って来てないよ。」 「私もだよ。どうしよ。」 聞き覚えのある声が聞こえる。控えめに一瞥(いちべつ)すると昼に隣で描いていた二人組みだった。 そんな姿を見ているとなんだか少しざまあ見ろと思ってしまう。 「仕方ない。走って近くのコンビニで傘買いに行こう。」 「あ、私も行く。」 二人は走って行ってしまった。 「傘持ってきて良かった。」 そういえば、とポッケに入れたクローバーを出す。 すっかりしおれたそれを見て、クローバーの花言葉ってなんだったかな、と気になった。 直ぐにスマホで意味を調べた。 もう少し絵を描こうと思い空いていた教室に行くとそこにはいままで誰かが描いていたであろう巨大な油絵のカンバスが置いてあった。 誰が描いているのだろうか、なんとなくカンバスの裏を見る。 そこにはローマ字で「Toyosima」と書いてあった。 自分でも分からないが沸々と怒りがわいてくる。 すると突然停電する。雷が校舎に落ちたらしい。 だがそんな事を気にするほど藍子は余裕がなかった。 暗くなった部屋で一人、しおれたクローバーを握り締めながらその絵を睨み呟く。 「絶対に、許さないから。」 その姿を一人の男が呆然と立ちながら見ていた事も知らずに。 見てくれてありがとうございました。 因みに、クローバーの花言葉は「私を思って」「幸運」「約束」そして「復讐」です。 可愛い花にも恐ろしい花言葉があるものですね。

みんなの答え

辛口の答え

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スゴイです!

すごいです。面白いです。 クローバーの花言葉って復讐か。


面白いです!

雷に雨、というシチュエーションが、雰囲気をつくっていていいと思いました! 藍子さんの視点で状況や気持ちが描かれているのと、第3者視点で状況が書かれているのも上手く分けられていてよかったです! 思いとどまってくれればいいのですが...。


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