南菜へ
今日も疲れたなー。あと少しでおうちにつく。 「ただいまー。」 いつも通り。お母さんがいるけど返事はない。台所からカチャカチャというお皿を洗う音が聞こえてくる。金剛南菜(こんごうみな)、私の妹だ。南菜からも何も言われない。どんだけ大声を出してもきっと届かないんだろう。 朝、学校に間に合うように早起きした。 「行ってきます。」 やっぱり何も言われない。 学校、目立たないように静かに過ごす。まあ、騒いだところで何も起きないんだけどね。 「マナさ、かわいいよねー。」 マナ?マナという名に反射的に反応してしまう。それは私が真菜、金剛真菜(こんごうまな)という名前だから。でもきっと…。 「歌もうまいし、本当にあこがれるよね。」 やっぱり。あの子たちが話しているのは今人気のアイドルグループ「MANA」のこと。メンバーがMAO(マオ)、AKARI(アカリ)、NATUMI(ナツミ)、AYAKA(アヤカ)で、それぞれの頭文字をとって、「MANA」。だからあの子たちは私のことを話しているわけじゃない。 今日は日曜日。金剛家にとっては大切な日。普段出張に行ってるお父さんが日曜日には帰ってくる。家族みんなが集まるのはよっぽどの事がない限り日曜日だけ。 午後2時。お母さんとお父さんと南菜が私と向き合って座っている。南菜は泣いている。お母さんとお父さんの目にも、うっすらと涙がたまっている。私も毎週のことだけど思わず涙ぐんでしまう。しばらくみんなでだまってたけど、南菜が口を開いた。 「真菜お姉ちゃん…。どうして…。どうして死んじゃったの?」 そう。私は日曜日の午後2時頃、塾に向かってるとき、車にひかれて死んだ。 ねえ、南菜。私はここにいるよ。これからもずっと。だから泣かないで。お願い。こっちまで悲しくなっちゃうから。南菜。今までありがとう。大好きだよ。 END