『天窓』
私は学校から帰宅すると、いつも通り自室に向かった。私の自室は屋根裏部屋。なぜ屋根裏部屋が私の自室なのかというと、私には5人姉がおり、姉達が家にある部屋を全て自室にしてしまったため、私は唯一空いている屋根裏部屋が自室となってしまったのだ。 やっと自室に着くと、私はベッドに身を投げた。しばらくベッドで横になっていると、まるでベッドが私の疲れを吸い取っていくかのように、私はどんどん元気を取り戻していった。ふと天窓に目がいく。私は天窓が少し嫌いだ。今は天窓からオレンジジュースのような色の空と、呑気に浮かんでいる雲が見えていた。 ある日、私は友達の楽々(らら)を家によんでお泊まり会をする事になった。夕食や入浴を終え、私達は就寝するために私の自室へと向かう。屋根裏部屋への階段を上っていると、楽々が弾けたような声で言った。 「天音(あまね)の部屋って、もしかして屋根裏部屋なの?」 「うん」 すると、楽々は瞳を宝石のようにキラキラと輝せて言った。 「いいな! 私、屋根裏部屋に憧れるんだ!」 屋根裏に着くと、楽々は小さな子供のようにはしゃいだ。 「やっぱり屋根裏部屋はいいなあ! あ、天窓がある! 素敵」 天窓を見上げている楽々につられ、私も見上げてみた。やはり何度見ても天窓は少し嫌いだ。 「私、天窓が少し嫌いなんだ」 「どうして?」 楽々はベッドの隣に敷いてある布団に寝そべった。私もベッドに寝そべる。天窓を見つめている楽々の瞳は、星々が映って、まるで小さな宇宙のようになっている。 「一日が早く感じるんだよね……。朝日が昇って、太陽がどんどん真上にやってきて、夕日が沈んで、星が出て、そしてまた朝日が昇る。なんか……虚しく感じるの」 しばらくしんとする。聞こえるのはカエルの合唱だけ。まるで、夕方に学生達が楽しそうに帰宅していたのが嘘のようだ。 「うーん……私には天音の気持ちはよくわからないなあ……ごめんね。でも、天窓は素敵だと思うよ。いいじゃん、空の変化が身近に感じられるのって」 「空の変化が身近に感じられる……」 私がそう小さく呟くと、楽々は眠そうに布団に潜り込んだ。 「ごめん……私、もう……眠……い。おやすみ」 楽々はうとうとしながらそう言うと、すぐに夢の中へと行ってしまった。 「おやすみ」 私もそう言うと、改めて天窓を見上げた。確かに、天窓は空の変化が身近に感じられる。そう思うと、少し天窓が好きになれたような気がした。