アカリ
電車の窓から見る景色は明るかった。燦然と輝く光に僕は俯く。 今日の上司はやけに機嫌が悪く、愚痴を延々と聞かされた。誰かの失敗を押し付けられ、同僚から嘲笑された。 残業で疲れた体をシートに沈める。 ついたため息は乗客が一人もいない車両に消えた。 「大丈夫。きっと、大丈夫。いつか、大丈夫になる」 自分に信じ込ませるように独り呟く。しかし、そんな言葉は今となってはもう自分にやる気すら与えてくれない。むしろ、呟くごとに胸が締め付けられる。 上司の声が呪いのようにねっとりと耳にまとわりつく。 誰もが学生時代を懐かしむ。あの頃は良かった、幸せだった、怖いものなしだった。そんな風に言う。僕は違う。学生時代、ずっといじめられ、教師から目の敵にされ、あげく、近くの不良にボコられた。進学校に通いやがってムカつく、そんな理由で。僕には平和な時代というものが存在しない。過去を懐かしみたくもないし、過去を振り返りたくもない。同窓会があっても行きたくないし、行けない。 人は成長する。だが、見た目は成長しても、心は成長していない人もいる。そんなことは分かっている。でも、毎日毎日こんな目にあっていれば、それは嘘なんじゃないか、そう思えてくる。さらに、地方から来たということで同僚の何人かからは嫌われている。 こんなことならずっと地方にいれば良かった。なんで、上京したんだっけ。 あ、思い出した。ここに来た理由。大学を出て、ここに来た僕は、なにか大きなことをやってやる。そう思ってここに来たんだ。悲しみばかりの過去を糧にして、勇気とやる気に変えてやる。そう思ってたんだ。 僕は車窓から外を見つめる。 僕は煌々と輝く、心は冷たい街を眺める。 頑張れるのは、君がいるからだよ。なによりも大事な、君がいるから。 電車が止まる。僕が降りる駅名を読み上げる。 僕は下車して、電車が僕を通り過ぎる。 駅にはまだ、人がいた。 僕は自分が住むマンションに行く。 炯然たる光が僕を照らす。 あのビルに飛べたら。あのビルに飛び上がれたら。 あの日見た夢の景色を見れるなら。 目頭が熱くなり、アスファルトに溢れた涙で、僕は自分が泣いていることを知る。 光に煌めき、鮮やかな色に染まる涙。これが溢れたのは、まだ生きていたい、生きたいと思うから。 ねえ、君もそう思うよね? 僕は携帯電話を取り出し、一ヶ月ぶりの君に電話をかける。君も下にいる、暗い空を見上げながら。
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好きだあああああ!
めっちゃ内容好きです! 文、上手いですね! 憧れてしまうぅ。