塩味のハンバーグ
私はお姉ちゃんと顔を見合わせた。勝っても、負けても地獄しかない。 「最初はグー、じゃんけんぽい!」 声に合わせて、私とお姉ちゃんは手を出す。私はパー、お姉ちゃんはグー。お姉ちゃんが負けた。 「蕗子(ふきこ)、期待するでない。期待しといて、貶したり、バカにしたりしないように」 「もちろん。知子(ともこ)お姉ちゃんのことはよく分かってるから。期待しないよ」 満面の笑みで言ってやると、お姉ちゃんはむっとむくれた。 「とにかく、早く。お弁当と朝ごはん。もう四時だよ?せっかく、早起きしたのに。お母さんは葬儀に出席、お父さんは出張。頼りになるお母さんとお父さんは今は家にいないからね。手伝ってって言われたら手伝うけどさ」 お姉ちゃんの表情からして、もはや意地になっている。 「自分だけで作ってやる!」 お姉ちゃんは瞳に闘志を込め、台所に駆け込む。私はそれを見てから、布団をたたみ出した。そして、私が呼ばれるまで時間はかからなかった。 「蕗子」 お姉ちゃんは絶望した顔で私を見た。 んーと、まず、どうしたらこんな状態になるのだろう? 食材など台所に置かれているものから推理して、作ろうと思ったのはハンバーグ、目玉焼き、焼きそば、味噌汁だろう。おそらく、ハンバーグはお弁当に入れるため、そのほかは朝ごはんのためだろう。ハンバーグだけではおかずにならないから後で色々、作るつもりだったのだろう。 だが、それにしても酷い。お姉ちゃんは本当に高校一年生なのだろうか?世の高校一年生がこれほど酷いものだとは思えない。つまり、お姉ちゃんが異常なのだ。 まるで、漫画のような状態だ。大げさに表現すると、調理器具が散らばり、肉が散乱し、食材が散乱している。私はこれを見て、これをやった犯人が姉であることを恥じ、我が身のように恥ずかしくなった。さらに、私はこれを食べるのであろう、醜いもののことを考え、戦慄し、背中に冷や汗が浮かぶのを止められなかった。と、こんな感じか。 私は、手を叩いた。 「お姉ちゃん、私が教えてあげるから。一緒に、作ろっか」 家庭科で5を取ったことは何回もある。やりたくなかったのは、ただ、単に作るのが面倒臭かっただけだ。 お姉ちゃんは一生懸命、料理をした。あんなに頑張るお姉ちゃんは初めて見た。 やがて、出来た料理は朝ごはんに味噌汁、ご飯、目玉焼き、お弁当にはハンバーグ、ご飯、ミートボール、夕ご飯に、焼きそば、肉じゃが、残りのハンバーグ、厚焼き卵、メンチカツ。 私はお姉ちゃんのお弁当に詰める。ハンバーグ、冷凍のチーズグラタン、トマト、ミートボール、ご飯。 お昼の時間になり、私は弁当箱を開く。 拙く詰められた料理。 ハンバーグは塩の味がした。 美味しいよ、お姉ちゃん。