色のない世界だけど、青色が好き。
「もういい、私には無理だった」 病院のベットの前で、カクンと膝から力が抜けて崩れ落ちた。 目の前の色が消えていく。 表現ではなく、実際に。 でも、そんなことどうでもよかった。 もういっそのこと、何も見えなくなればいい。 私は枯れ果て涙の出ない目を押さえて、目を閉じた。 あの日から、数年が経った。 なのに、私のみるこの世界には色がない。 全体的に暗い。まるで私の心にともなっているように。 脳のショックによるものだそうだ。 でもそんなある日、色が見えないはずの私が「青」だと感じた人がいた。 青、冷たい色なはずなのに、それはとても綺麗だった。 彼が私に差し伸べた手は、冷たかった。 言葉も刺すように鋭かった。 だけど、私にとっては暖かかった。 それは、色が見えなくなった理由を話したあの日、彼は私に呆れなかったから。 あの日、母が亡くなった日、親戚も家族も、みんな私のせいだと言ったのに。 「母を見殺しにしたのは、お前だ」って。 色が見えなくなった日からは、「それはお前の心の歪みだ」と罵られ、 余計に邪魔ものだと言われた。 なのに彼は、違った。 「…大丈夫」 彼はそう言って、凛とした目を少し細める。 「俺も、色が見えないおかげで、今、俺は怖がられなくてすんでいるから」 私は少し驚きながら言った。 「青色、でしょ?でも、怖くないよ」 私は彼の目を見て言った。 次は彼が、ちょっと目を見開いた。 そして、私たちは顔を見合わせて、クスッと笑った。 彼の瞳はきっと蒼色。怖いくらいに鮮やかな。 ハーフでもないだろうし、外国人の血を引いているようには見えない彼。 なんで瞳の色が分かったのか、私にもわからない。 でも、その蒼の瞳を持つ彼は、海のように広い心で受け止めてくれた。 だから、色の見えない私は、青色が好きなんだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 以上です。 ありがとうございました。