恋しい。あのペンダント。
あのペンダントは 確か、お父さんにもらった。 長く家を留守にするからって、海外出張の前日にくれたよね。 あの美しい海色をしたペンダントは、かすかにお父さんの匂いがする。 虹色に光る貝殻が埋めてあって 宝物にしてた。 あのペンダントは お母さんがくれた。 入試受かりますように、お守りとして持ってた。 太陽みたいにまぶしい色の、ハート型のペンダントは 入試が終わって、その後もずっとかばんにつけていた。 あのペンダントは メダルと言ったほうがいいのかもしれない。 妹のサチが僕にくれたペンダントは 折り紙で折ってあった。 決してうまくできていたわけではなかったけど 体が弱く、今も入院してる妹からもらったという事実があるから すごく重みを感じた。 あのペンダントは じいちゃんとばあちゃんが お土産ね、ってくれたもの。 金色のふちの中に エメラルドグリーンが光ってる、綺麗なペンダント。 その一週間後に、じいちゃんとばあちゃんが 交通事故に遭って、息をひきとったことは 今、あれから10年経った今も 信じたくないことだ。 あのペンダントは 親友の優奈からもらったもの。 誕生日プレゼントで サプライズでくれたよね。 転校先で 初めてできた友達からもらった そのペンダントは あの時、すごく輝いて見えたよね。 ああ、 なぜ僕は 大切な大切な 綺麗で素敵な たくさんのペンダントを 無くしてしまったのだろう。 もう戻ってこない、 大切な宝物たち。 僕は一生悔やむかもしれない。 「ありがとう。これからずっと、よろしくお願いします。」 結婚式の日、 妻の舞からもらった、ペンダントは 婚約指輪を綺麗な紐でつるしてあるものだった。 これは一生、なくしたくない。 そう思った。 「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。」 今まで交わしたことのない堅苦しい言葉を言い合って、つい笑ってしまった僕たち。 その時僕は、決心したのだ。 舞を絶対に幸せにする、と。 僕からは、日常の中で愛と希望と光を、 贈ります。 そして、 これからずっと共にあゆんで行くことを、 誓います。