君の夢枕で明日会おう
「ねぇ。そっちに行っても元気にしてる?」 彼女が自分に向かって聞いてくる。 「全く。元気じゃないよ。」 「元気ならいいんだ。私はねぇ、元気でやってるよ。」 だから元気じゃないんだって。聞こえていないみたいだね。 「そっか。それならいいんだ。」 「そういえばさ、中学の頃ずっと遊んでたマキちゃん、来月結婚するんだって。」 そう言って俯いてしまう。 「私も結婚したかったよ?でも君、先に行っちゃったから、出来なくなっちゃったじゃん。」 そう言って泣いてしまう。泣き虫なところはいつまでも変らないね。 「ごめんねぇ。僕もまさかこうなるとは思ってなかったから。」 自分の半透明な体を見ながらそう返す。本人には聞こえていないだろうけど。 「それだけ好きだったんだよ?謝ったって遅いんだから。」 今度は空を見上げる。涙が君のうなじを濡らし、そのまま乾いていく。 「知ってるよ。分かってた。俺も同じだったよ。だから君に告白するためにあそこに行ったんだよ。だけど......」 そこで言葉が詰まった。自分も俯いてしまう。変らず僕の体は半透明だ。 「だけど、って言い訳してるでしょ。絶対。」 驚いて顔を上げると彼女は笑っていた。 「分かるんだよ?だって君言い訳するときいっつも『だって』から入るんだもん。ばればれだよ。」 「そうだったっけ。自分じゃ気付かないもんだなぁ。」 苦笑いをする。 「ほんと、そういう癖って自分じゃ気付かないよね。私にもあった?」 「ありすぎるほどあったよ。」 泣く時はいっつも一人で居るときにしか泣かなかった事、人の事散々言うけど自分だって同じなこと、笑うと笑窪ができること。君は僕の事をよく知ってたけど、君自身のことは全く知ってなかったね。 「私さ、本当に君が好きだったんだよ?」 「うん。」 「君が居なくなったことまだ信じてないからね。」 「うん。」 「君がいつまで経っても夢枕に出てこないからだよ。」 「うん。」 「いい加減死んだこと気付いたら。」 「うん。」 「成仏してよ。」 「うん。」 「そしたら出てきてよ。」 「わかったよ。」 その瞬間、僕の体が完全に透明になっていく。そして光に包まれる。 「楓。好きだよ。この世で一番。大好きだよ。」 「大好きだよ。慧君。おやすみなさい。」 「うん。おやすみ。また、明日。」