永遠
……散々な人生だよ。 せっかくこの世に生まれたのに、親は死んじゃって。大都会の汚い児童保護施設に入れられたと思ったらさ、大地震で建物全壊。友達もスタッフも、どこにいるやら。一人残った俺は、この海に来た。海には生物がいる。魚や、貝が。なんとか生きていた。ホームレス仲間のおっさんもいた。おっさんはたまに、カップラーメンなんかを買ってきてくれた。なのにある日、おっさんが倒れた。腹を抱えていた。その晩、俺も激しい腹痛に襲われた。 多分さっき食べた貝に当たったんだ…。そう思った。そして次の瞬間、ガクッと何かが切れた感じがした。そして俺は、俺が死んだことを知った。 「……さん、R1029384756さん、聞こえますか」 「?」 なんだか変な感じがする。そういえば俺は死んだんだった。 俺は目を開けた。目がある。そっか、死んでも目はあるんだ…。聞こえたってことは耳もあるのか?すごいなぁ、死後の俺。 「R1029384756さん、聞こえたようですね」 「……ここは?」 「そのことは誰も知りません。私も知りません。神が存在するなら……いや、それでも知らないと思います。ここは、死と生に最も近くて、最も遠い場所。ちょっとでも動いたら落ちてしまいそうな、でもずっといたいような、そんな所。貴方は今、『生』の方から転がり込んできた。そして、間もなく死へと向かうでしょう。そう……あえてこの場所に名をつけるなら、『永遠』です」 「永遠……?」 永遠……ここは、永遠……。 「どうして?」 「何故でしょうね……。そのような気がしたのです。だから、永遠です。この場所は永遠だと、何かが訴えている。私かもしれないし、永遠自身かもしれない」 俺は不思議と、変な気持ちになっていた。嬉しいのか、悲しいのか、分からない。 そうか、永遠か……。永遠、永遠、永遠……。 「えいえん、かぁ」 声が出た。 「えいえん、かぁ…」 繰り返した。涙が出てきた。 「永遠なんて、ないのになぁ…」 そう、永遠なんて、ないのだ。親も、児童保護施設も、おっさんも。そして、この場所も、違うはずなのに。 「え、い、え、ん……」 ゆっくりと、確かめるように呟いた。もう我慢できなかった。短い人生で溜め込んだものが、いま、溢れ出ていた。そして、流れ落ちる。それは、涙という形になっていた。普通の涙だと、泣いても気持ちが流れることはない。ずっしりと、居座っている。けど、ここでは、永遠では、流れて行くのだ……。 「えいえん」 俺は最後にそう言った。そして、『死』へと落ちていった。