私の眼球
シオンは、目が見えない。もともと目が見えなかったわけではない。何がきっかけとなって目が見えないのか、シオンは、覚えていない。親に聞いても答えてくれない。忘れてしまった。美しかった、木も、花も、優しかった、母も。 母は、今も優しく接してくれるが、シオンは、その優しさが、本当の優しさなのかわからない。 母は優しい声で接するが、もしかしたらシオンがその顔を見ることができないのをいいことに、もしかしたら憤怒の表情なのかもしれない。 そんなシオンに、ニュースが飛んできた。ドナーが現れたのだった。早速 角膜移植をすることになった。 シオンは知ってしまった。もしかしたら、自分は角膜が傷つけられたということなのかもしれない。 つまり、誰かに襲われたのではないか。シオンは、そのことを、母に言わなかった。だが、心に秘めているとシオンの脳内に、その考えが、響くのだった。その響きになやまされていたとき、シオンに視力を失った時の記憶が、蘇ってきた。そして、角膜移植がはじまった。 ー記憶ー シオンは幼い頃、知らない男に、保育園から帰る時に、手紙を受け取っていたのだった。母がやめてといっても。 手紙の内容は、君と同じ景色が見たいというものだった。ある日シオンが外に出ていたとき、襲われた。 眼球を傷つけられた。その日からシオンの目が、見えなくなった。 ー現在ー シオンは記憶が蘇った時、強烈な吐き気に襲われた。自分に入れられた眼球は、記憶の中のあの男のものだったんだ。 そして今あの男の中には、私の眼球が入っている。ドナーはあの男だ。あの男は、私の眼球を入れることによって、私と同じ景色を見ようとしたんだ。そしてその翌日、シオンの、家の郵便受けに、手紙が入っていた。 「やっと君と同じ景色を見られるよ」