恋と贄
道路の脇、草むらになっているところに座り込んでいる少女。 彼女は整った顔立ちをしているが、人と話すのが苦手で、学校では浮いている。 その少女の目の前には、倒れ込んだ男がいる。 近づいた僕を、彼女は一瞬見る、が、すぐに視線をソレに戻す。 ソレは死体だった。 「君は、ここで、何を…?」 見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。この街では最近、連続殺人事件が起きている。 僕は疑念を抱いた。 問わずにはいられなかった。 彼女はこう返す。 「道端にほっぽり出されて、何もされないなんてかわいそう」 「でも、理不尽に死んでいったのに、問答無用で焼かれてしまうのもかわいそう」 「だから、つかの間の安息を与えているんだよ」 彼女の綺麗な目に映るソレは、なんとも形容しがたい形をしている。 この件は、様々な憶測が飛び交っていた。 現実的なものから、超常的なものまで。 「君は、どの説が有力だと思う?」 「…知らない。聞いたこともない。」 確かに、そうだ。腑に落ちないことはなかった。彼女は学校で浮いている。このような行動をすることからも、それは見て取れるだろう。そんな彼女が、(いくら飛び交っていたって)陰謀論を知っているわけもない。 「そうか。僕は、『山の守り神説』が有力だと思うよ。」 「…そう。」 「みんなの間で言われているのは、山に踏み入った人間を順番に殺している、という説だ。山の守り神の祟りってやつさ。」 「恐ろしい話ね。」 その言葉を聞いた僕は、ちょっとムッとした。 「いいや、僕は祟りなんかじゃないと思ってる。」 「じゃあ、何?」 「山の守り神は恋をしたんだと思うんだ。」 「…へぇ。」 「山の守り神は時々人の姿で街に遊びに来るんだ。そんなある日、すごく綺麗な女の子に出会った。」 「守り神は、その女の子の気を引きたかった。だから彼女に近づく男を殺していったんだ。」 あ、しまった。 彼女はきっと訝しんでいる。 当然だ。こんな、気味の悪い話を… 「…あっ」 僕の思考を遮り、彼女はぽつりとこぼした。 何かを悟ったように見えた。 その日、彼女はこの街から忽然と消えた。 ━━━━━━━━━━━━━━ 私には日課がある。 毎日この街で殺された人を見つけ、「安息を与える」ことだ。 その死体はなんだか、腹がぐしゃりとなっていて、なんとも、「人が殺った気がしない」のだ。 だからと言って、獣に殺されたように見える訳でもない。事故でもない。 だから、様々な陰謀的な憶測が飛び交っている。 それをしていたある日、少年に見つかってしまった。 彼は最近…連続殺人事件が始まる少し前、だったか、その辺りで、転校してきた。 連続殺人事件がすぐ始まってしまったことから、「彼が犯人ではないか」というウワサが流れた。 彼はどうやら、山の守り神が犯人であると思っているらしい。 しかし、周りとは趣向を変えた主張をしている。 全ては、守り神の「恋」が原因である。 そういう説だ。 しかし私は、違和感を覚えた。 彼の言動は、「一人称的」なのだ。 まるで、自身が経験したかのような……。 あっ 小さく声が漏れた。それを目の前の『神』は逃さない。 「僕は君に恋をしたんだ。」
みんなの答え
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もう1回記憶を消して読みたい…!
年下失礼します…。 終わり方が綺麗で余韻があってすごいです…! 読み返すと、ここはこういうことかぁ…!ってなる表現(女の子が「恐ろしい話」と言って男の子がムッとしたところなど)がたくさんあって、すごく考えられてる作品だと感じました。 もう一度記憶を消して最初から読みたい…それくらい落とし方が綺麗です。 素敵な作品をありがとうございます!
おぉぉー!
年下から失礼します。 すっすごいです!。 結末が凄かったです。 もう凄いしか言えません笑。