皇紀表記ノ永久時計。
「…あっついなぁ」 エアコンの無い広い部屋でそう呟く。外は八月の灼熱地獄真っ盛りで、セミの大合唱が空気を常に振動させている。 扇風機の風も頼りにならない、そんな暑さである。 {今年は例年よりかなり暑い夏になりそうです。各地ではこの猛暑による…} ニュースもこんなことばかりやっている。それほどに今年の夏は異常気象だ。 「こんなんじゃ勉強もできないっての…運動するにしても、この気温じゃなあ…」 友人と遊びに行く、ということもできただろうが、現在俺がいるのは… 「弘樹~スイカ食べるかい?」 「ああ、ばあちゃん。ありがとう。ちょうど今休憩しようと思ってたんだ」 家がある都市部から離れた田舎の、祖父母家だ。 何故かというと、俺の父親は現在海外出張、母親は仕事が忙しく夏の間は面倒が見れないということで、祖父母家に暫くいることになったのだ。 その為友人とは連絡こそできても会うことはできない。 「ただいま」 「お帰り爺ちゃん。畑、どうだった?」 スイカにかぶりつきながら、後ろを向き、そう聞く。 「いやあ…この暑さで株がヘタってる。あんまり期待できんかもしれんなぁ…」 爺ちゃんは農家で、主に夏野菜を栽培している。 今日は朝から畑の様子を見に行っていた。 いくら都市部より涼しいとはいえ、やはり多少の影響は出ているらしい。 爺ちゃん曰く渇水の段階では無いものの、近くの小さな池が干上がるなど危機感は日々高まってる、とのこと。 いくら若いとはいえ、熱中症に気を付けないといけないな… 「ちょっと外歩いてくるよ。気分転換に」 スイカを一切れ食べ終わった俺は、そう伝えて外に出た。 ―外に出ると、より一層暑さは増す。直射日光のあるなしでも結構変わるものだ。 舗装されていない田んぼ道をひたすら進み、林に入る。 林に入ると気温は幾らかマシになり、涼しい風が吹くようになると適当な岩に俺は腰を下ろした。 周囲はブナの木が生い茂り、目の前には赤いカンナが咲いている。 それ以外特にこれと言って何かあるわけでは無いが、涼む目的なら十分な場所。 「はぁ…自然っていいなあ」 葉が広がる上を見て、そう呟く。 都市にはない良い所だ。 そう考えながら暫くその場所でボーっとしていた。 「…そろそろ戻るか」 しばし涼んだ後、息抜きはこれくらいでいいかと立ち上がったその時だった。 「…ん?なんだあれ」 …視界に不自然なものが映り込んだ。 干上がった水溜まりのような場所に不自然な立方体が埋まるような形で落ちていたのだ。 形と色的に、自然にできたものではない、人工物。 俺はそれを拾い上げ、そう考える。 ぱっと見薄汚れた箱のようなもので、ちょうど手のひらに乗るサイズ。 箱の側面を一周するようにくぼみがあることから見て、何かの容器のようだ。 少し苔が張り付いている。古いものだろうか。 「…取り敢えず持ち帰ってみるか」 時間も時間だったので、俺はその箱を持って祖父母家に戻った。 ―そして夕暮れ後。 俺は一人でその「何か」と睨み合っていた。 箱…のようなものではあるのだが、引っ張っても開くことは無かった。となると他の物だろうか。 んで今。何かヒントが無いかこう睨み合っていたという事である。 そしてもう明日にしようかと諦めていたその時に、側面の漢数字を発見したのだ。 「え~と…三八伍七?なんだこれ…ってえ?」 そう数字を読むと、先ほどの固さが何だったのかというほどあっさり箱は二つに割れた。 その中を覗くと、軽い音を鳴らしながら動く懐中時計がそこにはあった。 試しに手に取って見ても、特に汚れや損傷のない綺麗な時計。 内側では秒針、分針、時針の三本と小さな赤色の円柱が高速回転をしていた。 時刻盤の上には数字が表記されており、そこには「2680」の四文字が並んでいた。 …2680?年ではないだろうし月日でも無いだろう。 「一体これは…?」 そう呟いた瞬間。円柱の色が林に生えていたカンナ色に変化、そのまま俺は気を失った… ―――あの不思議な体験から、かれこれ20年以上経っただろうか。 あの後、自分の布団で目が覚めた時には箱の残骸は消え、手元に握られた時計のみが残っていた。 何となく捨てる訳にもいかず、今もあの時計は使い続けている。 未だにあの時計が止まったことは無く、傷も付いたことは無い。 また、俺もこの時計を持ってから病気や体調不良になっていない。 御守りや護符の類なのだろうか。未だによく分からずにいる。 もう俺は35を超えたただの会社員ではあるが、なんだかんだ車に轢かれても生き延びたりと運も良くなったしな。 更に、若く見えるのか未だに20歳と間違えられる等々…同級生にも「若いなあ…」と言われる。同級生だけどね? 「………」 ―――――本 当 に 俺 は 年 を 取 っ て い る の か ?
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凄すぎる!!
本当に凄すぎます!!語彙力が素晴らしいです。「灼熱地獄真っ盛り」などの難しい言葉を使いこなせていて凄いです。私は分からなくてWebで調べました笑 「渇水の段階では無いものの、近くの小さな池が干上がるなど危機感は日々高まってる、とのこと。 」「周囲はブナの木が生い茂り、目の前には赤いカンナが咲いている。 」などのリアルな表現がされていてこの物語の情景が鮮明に想像できます。私は田舎に住んでいますが本当にリアルだと思います笑 また、最後の文を1文字1文字を強調するようにしたのが少し怖く感じて、インパクトがあって素晴らしかったです! そして文章の主人公(弘樹)はそれから歳を取っていない、しかも「車に轢かれても生き延びたり」とあるので本文に書いてある通り御守りなどか、もしくは不死身になった、という事ですかね~!20歳に間違えられる、とありますが主人公は何歳なのでしょう… それとも20歳まではすすんだのか… 両親とも面倒が見れないので祖父母の家にあずける、ということは高校生で20歳に見えるのでしょうか…長めの文でしたが、長さを感じさせない文章でどんどん読めました。面白かったです!!
めっちゃ不思議!!
Hello! ソーラーパネル。さん、初めまして。小説家のアクセサリー☆と申します。今日から宜しくお願い致します。 とても不思議な小説ですね。 謎が気になって仕方ありません。 どんどん物語の中に引き込まれました。 しかも、ソーラーパネル。さんの語彙力はとても素晴らしいです。 さらに、小説を書く才能もとてもあります。 あなたは小説家に向いていると思います。 私は、ソーラーパネル。さんのファンです。 あなたを尊敬します。 これからも小説を書いてください。応援しています。 good-by!
流れがきれいですね!
三八伍七と、カンナ色に変化した、というのがわかりませんでした! 伍だけ、五ではないのが気になるのと、カンナの花言葉の一つに「永遠」があるのが関係しているのかな、とは思いました。 2680年は、題名のヒントから皇紀(年の別の表し方)で表されているようだったので、西暦に直すと2020年になるので、そこから主人公の時間が止まっている? 考えるのは楽しいです!答えをどなたか...。
ええ!
こんにちは!ゆはです。 最後の文にドキっとしました。 私には分かりませんでした←バカ なんか世界観に引き込まれると言うか圧倒されるような物語。 しかも文字数も結構使ってくださっているのに飽きない。 という他の作品にはないものがすごく特徴的に思えました! 楽しく読ませていただきました♪ 次回の作品も楽しみにしています。