夕焼けは夜空に溶ける
「ちょっと碧衣!話聞いてる?」 「え、あ、うん!それでどうしたの?」 「それで、春樹君がね~」 はあ…もう何回目か分からない。親友の亜生が話す春樹君の話を聞き続けるのも、こうして亜生の話を聞いて憂鬱になるのも。 私は岬 碧衣。いつも親友の亜生と一緒に下校する。私と亜生はとても気が合うから、学校では常に一緒にいる。亜生と私は、好きな食べ物も同じ。好きな色も同じ。そして…好きな人も同じ。だから、亜生の好きな人、春樹君の話を聞くのは正直とっても辛い。亜生は春樹君に片思いしてるから、私は応援してることになってるけど、本当は私も春樹君に片思いしてる…ってことは誰にも言えない。亜生には絶対言えないし、他の友達にも言ってない。だから亜生は毎日春樹君の話をしてくる。はあ…私はこれからもずっと辛い思いをするのだろうか。そして、春樹君と亜生が両思いになったら、私はまた自分の気持ちに嘘をついて辛い思いをし続けるのだろうか。暗い気持ちのまま家に着いて、玄関で靴を脱いだその瞬間、ポケットのスマホが鳴り出した。電話?でも誰から?電話は、ついさっき別れたはずの亜生からだった。通話ボタンを押し、スマホを耳に当てる。スマホの向こうから亜生の声が流れこんできた。 「もしもし碧衣?私、明日春樹君に告白する!」 「え………?」なぜそんなことになったのか。亜生の言葉が信じられない。けれど、亜生がそう言ったのは事実。 「そうなんだ。が…頑張ってね。」 「ありがとう!頑張る!」亜生はそう言って電話を切った。 亜生と春樹君は幼なじみだし、かなり仲が良い。きっと告白されたら付きあうようになるんだろう。春樹君は私のことなんて忘れて、亜生という彼女のことしか考えられなくなるのかも。辛いけど、今更亜生に本当のことをいうなんて出来ない。私は、亜生と春樹君が幸せになるのを祈ることしか出来ない。さっきまで窓の外に広がっていた夕焼けは、私の心のような暗い夜空に溶けていった。