青い桜と狐面少女
目の前に広がる、満開の桜の風景。 今は夏の筈なのに。 なぜこんなにも美しく咲いているのだろう。 それに、桜の色は青かった。 綺麗な水色から濃い青色まで。 透き通っている海の色…という表現が出来るものもある。 そしてその青い桜の花の周りには色とりどりの蝶たちが集まって、幻想的な風景を作り出している。 此処は何処だろう。 「そこは彼岸ならではの青い桜の名所ですよ」 いきなり後ろから声がした。 慌てて振り返ると、白い狐面で顔を隠し、漆黒の着物姿の少女が立っていた。 少女が狐面の内側で微笑んだのが私には分かった。 「彼岸とは、死者の世界です。 あなたは、事故に遭い、亡くなられたのですよ」 え?私が?? 「…嘘」 「本当です。なので、この彼岸世界のもっと奥に行く前に、この場所で生きていた頃の思い出を一つ、あなたの頭の中に蘇らせましょう。」 現実が受け入れられなかった。 でも、確かに覚えている。 事故に遭った、あの感覚を。 私は、涙が出ないことに自分でも驚きながら少女にこう伝えた。 「…私が生まれた時を見せて…」 「了解しました」 狐面少女は一際大きな青い桜の木の前に立ち、幹に手を触れた。 すると、私の頭の中に、出産室の情景が鮮明に浮かんだ。 「オンギャアアア…オンギャアアア…」 生まれたばかりで泣く赤子。 そしてその赤子を抱きながら嬉し涙を流す女性。 「生まれたのよ…私の可愛い子。」 その横で優しく微笑む男性。 二人は夫婦関係だ。 「おめでとうございます、無事出産、元気な女の子です」 満面の笑みで出産の成功を改めて伝える看護師。 その出産室は、暖かい雰囲気で満ちていた。 その赤子は、私だ。 そして、抱き合って喜ぶ私の両親。 私は、沢山の愛情を込められて生まれてきたのだ。 そう思うと、私はなんだか暖かい気持ちになった。 ハッ、と我に返る。 今のが、青い桜の木が見せてくれた私の思い出。 一番初めのとても大切な思い出。 私が涙を流していると気づくのは、そのすぐ後だった。 泣いている私を見て、狐面の少女は足音一つ立てずに歩み寄ってきた。 「思い出、見れましたか?」 「うん…ありがとう」 すると、少女は再び優しく微笑んだ様だった。 まだ現実は受け入れがたいが、あの大切な思い出のお陰でとても暖かい気持ちになれた。 私は、自分の姿がだんだん薄くなっていることに気付いていた。 「…さようなら、少女さん」 「良い思い出を見られた様で安心です。 ようこそ、彼岸へ…」 少女の優しい声を最後に聞き、私はその場からいなくなった。 事故で死んだ娘の魂がしっかりと成仏されたことを確認した狐面の少女は呟いた。 「思い出…良いですね。 私もいつか見られるでしょうか…。」 そして、はぁ…と息をついた後に少女は青い桜の木々から離れた闇の中へと消えていった。 完 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー こんにちは、作者のあおねこです! ほんのり暖かいオカルト系を書いてみました(^^) 感想お待ちしてます、では!
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すごいです
絵がなくても様子が想像できます。 素敵な作品ですね!