短編小説みんなの答え:1

「華花、学校遅れるよ!朝ごはんは?」 「ちゃんと食べたよ。あ、お母さんマフラー、リビングにあるから取って!」 私の日課は姿鏡の前で支度をする事。このアンティークの姿鏡は病死した祖父が趣味で集めた物だ。 しっかり制服を着て、忘れ物が無いか確認して、今はとても寒いので防寒も忘れない。木で出来たお洒落な縁を眺めていると直ぐに時間が経ってしまう。 「…っと、出来た。やべ、時間だ」 階段を駆け下りて玄関に向かう。少しカーブした階段を降りるときに転びそうになるのは毎度のことだ。 「いってきまーす!」 家を飛び出して、所々凍っている地面に気を付けながらバス停まで走る。朝の人が少ない時間なので全力で走っても迷惑にはならない。ローファーは走りにくいが我慢するしかない。 住宅街をでて道路沿いを走る私の横を乗ろうとしているバスが通りすぎていった。まずい。このバスには乗れないかも… 「間に合って!」 嫌な考えを振り切って、最後尾まで必死に走る。ドアが閉まる前にバスに乗り込み、荒くなった呼吸を整えながら見慣れた人の横に座る。 「あ、おはよう。今日も元気だね」 「おはよう、ございます。寒いね…ですね」 「ふっは」 「ちょ、なんで笑うんですか!?」 吹き出すように笑った男の人…橘さんは口角を上げてさらに笑っている。少しの間肩を震わせていた橘さんは、私の方を見てまた笑った。 「いや、だって。柳さんこの前までタメ口だったのになぁって」 「それは、橘さんが年上だなんて知らなかったからですよ!」 「俺が大学生だけどって言ったときの顔、思い出しちゃって。ごめんごめん」 隣に座るようになってから話すようになった橘さんのことを最初は同い年位だと思っていたが、先週まさかの大学生だということが判明した。 「あ、今日も走ってきたでしょ」 「何で分かるんですか?」 「髪の毛、掛かってないよ」 そう言って、結べなかった髪の毛を耳にかけ直してくれる。冷たかったはずの耳までが一瞬で顔が温かくなる。 「はい、出来た」 「ありがとう。ああ、ありがとうございます!」 「別にタメ口でいいのに」 こういうくだらない会話を毎日している。昨日学校であったこと、昨日見たテレビ番組のこと、面白かったこと。20分ほどすると、あっという間に私が降りるバス停に着く。少し名残惜しいけどお別れの時間だ。 「じゃあ、また明日」 「うん、バイバイ」 _____ 今朝は早く起きれた。余裕を持ちながらバス停まで来たのに、今日は橘さんが乗っていない。こんなことならゆっくり寝ていねばよかった。 毎朝どうにかしてあとバスに乗っているが、実はもう少し遅くても学校には間に合う。半年前に早く学校に行く用があったときに初めて見てから橘さんのことが気になっているのだ。 話すようになったのは、本当にたまたま私が落とし物をしたから。次の日に声をかけてくれたのだ。それから毎日と言っていいほど話すようになった。 「どうしたら可愛くなれるのかな…」 今までお洒落に興味がなく、どうすればモテるのかさっぱりわからない。どうやって連絡先を聞けばいいのかすらわからないのだ。 「メイク…してみようかな」 周りの可愛い子達がしているメイク。難しいことは出来ないけど、少しだけならできる気がする。放課後に友達を連れてお店に行くことにしよう。 _____ 「はぁ、メイクむず」 いつもの鏡の前で覚えたてのメイクをしてみる。こんなのを大人になったら毎朝やらないといけないと思うと大人は大変だ。 「この鏡を前に使ってた人は、きっと美人で、お化粧上手だったんだろうな」 古いけど暖かみのある鏡は私にはあまり似合わない。もっと落ち着いた大人の女性の方が似合うだろう。 「でも、振り向いて欲しいし!」 よしっ!と気合いを入れて立ち上がり、鏡をよく見てから、とりあえず友達に教えて貰うことにした。 _____ 「で、ですね。友達に薦められてメイクしてみたんですけど、もう散々 で…」 いつものようにバスで会った橘さんにメイクの話をする。どんな話でも楽しそうに聞いてくれるから何でも話してしまう。うっかり好きとか言ってしまいそうだ。 「柳さん、その鏡大切なんだね」 「あれ、私そんな事言ってました?!」 いつの間にか鏡自慢になっていたらしい。せっかくなので前に取った鏡の写真を橘さんにも見せた。 「お洒落でしょ。これが似合う位素敵な女性になります!」 「…似合ってると思うけど」 「…え、今なんて?」 恥ずかしそうにする橘さんを見て何も言えずにいると私の手に橘さんの手が重なった。 「…もう十分素敵ってこと。嫌かな?」 「全然、嫌じゃない、です」 手を繋いだだけなのにとても幸せに感じた。

みんなの答え

辛口の答え

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すごい!

年下からでごめんしゃい(T^T) すごいです!読んでて楽しかったです!


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