雨の中
「雨だ」 車に轢かれて死んだ私は現世に戻ることになった。神様の厚意で。 家族に会わせてあげるとのことだった。きっと、私の嘆きようがすごかったからかな? 「だって、最後にお父さんにぶつけた言葉が嫌いなんて」 そんなの、死んでも死に切れない。 それにしても、私はお金と傘を持っていない。 服はブラウスにスカートだけど、濡れて服が透けるのは避けたい。 家族に会いたいが、このままで行けるはずもない。傘を万引きするわけにもいかないし、どうしよう。 困っていた時、 「傘、どうぞ」 と目の前に差し出された。 傘を差し出してくれたのは、私と同い年くらいの可愛い男子だった。その男子に私は戸惑った。 「いい……の?」 男子は笑顔で頷いた。 「でも、何で?」 「だって、困ってたじゃん。傘が無くて。それに」 男子はそこで言葉を止めた。 「それに?」 私が促すと、 「俺の姉ちゃんにそっくりだったんだよ。本当に姉ちゃんに見えた。姉ちゃんなわけないのに。姉ちゃん、一週間前に交通事故で死んじゃったから。 姉ちゃんが最後に父さんに投げつけた言葉が嫌いだったんだよ。それで、父さんの目の前で車に轢かれた。 父さん、初めの三日間は生ける屍だった。仕事はきっちりこなしてたけど、生気が無いって言うのかな、魂が抜けたみたいだった。でも、四日目から変わった。いつも通りの、冗談を言って明るい父さんに戻った。 自分がこんなんじゃ、姉ちゃんが悲しむからって元に戻ったんだよ」 思わず、私は黙ってしまう。 その通りだよ、正司(まさし)。 その姉ちゃん、私だよ。 沈黙に耐えられずに、私は言った。 「そのお姉さん、名前は?」 「鈴穂(すずほ)」 私は笑顔を作った。 「偶然ね。私の名前も鈴穂なの」 正司の動きが止まった。 目が見開いて、口があんぐりと開いている。 「姉……ちゃん?」 「うん。神様から家族に会ってって」 正司は何が何だか分からないような表情をした。それから、泣き出した。 私は正司の背中を撫でながら言った。 「正司。私はいないけど、楽しく暮らしてね。それと、お父さんに伝言。嫌いって言ってごめんね。お父さん、見守ってるから仕事、頑張ってって」 正司が頷いたのを見て、私は手を叩いた。 ピタッと雨が止み、私はジャンプした。
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おお・・・
話は単純だけれど、それでいて深みがあるのでいい小説ですね!