賢者の沈黙
成績って所詮は教師の主観なんだなとふと思った。 私と双子の弟の成績の差はおかしい。 弟よりテストの点数が良くて、運動神経も良い私より弟の方が成績が良い。 その原因は分かっている。 弟は学校が望む回答を書くから。 道徳なんか、あらゆることに突っかかってあらゆることにツッコミを入れてしまい、本心を書いてしまう私とは違って、弟は学校が望んだものをそのまま書く。だから、教師は良い成績をつける。おまけに発表もするから積極性の面でも評価される。 分かってる。分かりきってる。 人前で喋れた方が将来、得だって。 苦手なのに。 分かりきってることを指摘されて、苦手なことを強要される。 所詮、学校ってそんなもん。 文章だけで騙せられる。 本心を書く子供より、テンプレートを書く子供を尊重して、評価する。 たかが、その程度。 成績の良い子が行き着く先はどこか。 良い高校、良い大学に入って、良い会社に入る。 もちろん、学歴フィルターのおかげでその会社は頭が良い人ばかり。 頭脳派たちに混じって典型的な会社が望んだ仕事をし、順風満帆。 思わず、ため息が出た。 成績で人生が決まるなんて。 人の評価ほど当てにならないものはないのに。 頭が良くない大学を出た人の方が、斬新な発想が出来たり、人格的に優れていたり、共感する能力が高い人が少なくないかもしれないのに。 良い大学を出た人よりも社会に貢献するかもしれないのに。 私の本棚にミステリー小説を見かけて、一階にいるだろう、弟に聞く。 「日本三大名探偵は?」 「金田一耕助、明智小五郎、神津恭介。最近ならもっと色々いると思うけど」 すぐに答えが返ってくる。 知ってるよ、日本三大名探偵。 有名だもの。 良い子ちゃんは抜かりない。 「世界三大名探偵は?」 「シャーロック・ホームズ、あとはエルキュール・ポアロ。あとの一人、誰だろう?」 「私ならブラウン神父を入れるかな」 弟が沈黙した。 もしかしたら、知らなかったかもしれない。 推測は私の心を高ぶらせるのに十分なものだった。 少しだけ、弟を真似てみても良いかもしれない。