短編小説みんなの答え:0

晴天の日

傘を忘れた。 ため息をつく。 高校からここまでくるまでの間は何とか空は曇りの状態を維持していたのに、ここに着いた途端、雨が降ってきた。 雨が止むまでここで教科書でも読んでるか。模試も近いし。あの模試で偏差値を5上げなければ第一志望の大学に必ず落ちてしまう。 そうは分かっているのに、通学鞄に手が伸びなかった。 悲しいことに、今月は金欠だ。 好きな作家のドラマの原作小説に夢中になってしまい、シリーズを大人買いしてしまった。バイト代は出たものの、貯金しなくてはならない。大学に入学すれば、自立することになるだろうから。 「コンビニの前にいるのに、傘を買えないなんて」 シリーズを一気に買わなければよかった。 雨は止みそうになく、私は教科書の代わりに例の大人買いしたシリーズの二冊目を出した。 幸い、文庫本の方を購入したのでお値段も安く、バッグに収まる。そして、外でも読み易い。 探偵側の視点から犯人の視点に移った時、声をかけられた。 「どしたの?唯菜(ゆいな)」 その声に反応してしまう。 私は本から顔を上げた。 「ユナって呼ばなくなったね」 傘を差している広(ひろし)は左手で頭をボリボリと掻いた。 「去年生まれたばかりの従妹の名前とやっと区別が出来るようになった」 広が傘を私に向けた。 え?え?え? 「相合傘?」 「うん」 広は当たり前のように頷く。 やっぱり、私ってただの幼馴染なのかな。 憂鬱な気分になる一方、私は戦略的に考えてもいた。相合傘。距離を縮める絶好のチャンス。それに、単純に雨にならずに済むから嬉しい。 「ん」 本を鞄にしまって傘に入らせてもらう。 雨に濡れることなく、家に着いた。 玄関に向かった時、私は広の右肩だけが濡れていることに気づいた。 「ありがとう」 二重の意味のありがとうに広が気づいたのか気づいていないのかわからない。 軽く右手を挙げて、私の隣の家に入っていく。 明日、告白しようと決めた。

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