貴君。
「貴君、ここで死ぬつもりだろう。」 その中年の男はべイプの水蒸気を吐き出して言った。 「はあ…」 濃いケミカルなグレープの匂いに顔をしかめて私は言った。 「なぜそう思うのです?」 「こんな夜更けにこのおばけ川に来るなんて、酔っ払いか自殺するものしかおらんのだよ。」 計画は失敗した。確かに私は今日ここで死ぬつもりだったが、人に見られて成功するとは思えない。おせっかいに救急車などを呼ばれるのがオチだろう。 「まあ貴君、座り給え。別に私は止めようとしているのではない。貴君と話がしたいのだよ。」 男の声色に偽りの気持ちは感じなかった。しかたなく河原に座る。夜の芝生がひんやりと心地いい。 「貴君の事なら私はなんでも知っている。君が学校で酷い虐めを受けていることも、家でもはれ物扱いで居場所がないこと。唯一の友人が虐めに加担したことも。」 ぞっとした。なんだこいつは、なんで知ってる。思考を読み取るかのごとく男が続けて喋る。 「私はいわゆる神、仏、霊、ポルターガイスト、悪魔。そういった類の存在だ、ヒトではない存在。」 自分の心拍数がゆっくりになるのを感じる、一つ一つの拍動が重く身体に響く。恐ろしい。 「といっても貴君を殺したり、操ったりする意思がないことは証明しよう。まあ、かといって助ける、ともまた違うかもしれないが。」 暫く、男がべイプを深く吸い込み肺に(というか、神なら肺などがあるのだろうか)入れ蒸気を吐き出す小さな音だけが響いた。 「あの」 これは私だ。 「つまり、端的に言うと私に何を求めているのですか?」 ううむと男がわざとらしく唸ってみせる。 「つまりだね、私は貴君を気に入っているし、なかなか面白い趣味を持っているのも知っている。短編集を書くのが好きだろう?」 そんなことまで把握されていたとは。正直恥ずかしい。 「あの短編集、良い出来だった。要するに、貴君の居場所が学校にも家にも無いというのならば…」 「これから夜に、ここに来なさい。私が貴君と話をしたい。」 男がにやっと笑いそう言った。全く、これが神とは。 「ええ。じゃあ、今日のところはこれで。」 そう言って私はおばけ川を後にした。午前1時40分、街頭に照らされた仄暗い住宅地を、私は鼻歌を歌い歩いていった。 『貴君。』 作:蒸気波420
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意味深...
貴君って何かなって調べたら、”男が対等の相手を指す語”... ”対等の相手”?..... これって、「神」が「私」にあなたも神になろうって誘惑してるってこと? ”おばけ川”は三途の川ってことかな... 読解力ないからわかんないや... 違ったらゴメンナサイ。