短編小説「夏に落とした物」
夏 この季節は唐突に到来を告げた。これまで楽しかった夏は去年、別れを告げて俺の前から消えると今年からつまらないクソみたいな夏が到来してしまった。いや、到来させてしまったのかもしれない。 「楽しい事なんてネェよ」 そうマヌケなセリフを吐いて俺は高校生と言う分際でありながらコンビニでパクって来た缶ビールを喉に流し込んだ。 不味い 俺はロクでもない野郎だった。 プラプラ駅前をうろついていた。田舎県だが流石に県庁のあるこの町の駅は少し栄えていた。 「やめて下さい!」 プラプラ歩いていたら何か揉めている所に遭遇。男3人女1人…普段の俺なら誰かが警察かなんかを呼んで助けてくれるだろうと放っておく男だが今回は違った。 気付くと男たちは逃げていたし、俺は頬が痛かった。何よりお気に入りの学生スラックスが少し破けていた。ショック… 第一、なんで女なんか助けたんだ?なんでだっけ?…あっそうだ。中学時代の同級生に似てたからだ。あの子逃げられたかな?なんて馬鹿みたいな事を考えていると声をかけられた 「あの…大丈夫ですか?…って!…君(くん)…」 うわっ…まだ居たのかよ。早く逃げれば良かったのに。また危険な間に合うぞ。そんなヒラヒラかわいいスカート履いてたらよ。 「え?…何言ってんの?」 …どうやら心の声が全て漏れていたらしいが、俺に羞恥心はない。多分。 あと、この女の子は本当に俺の同級生だった。こんなダメダメの俺を見たらどー思うのかな。 「ありがとう…私…あんまり力なくてアイツらから逃げたくても逃げれなくて…」 「そうだったんだ。良かった…助けられて」 我ながらギザな言葉を言った。 「…君、イメチェンした?もしかして高校デビューってやつ?」 確かに俺は高校生になって半年で不良の仲間入りを果たし、髪を少しだけ茶色に染めたのでイメチェンと言えばイメチェンをした。 「うーん…まぁそんなもん」 「ねね!久しぶりに会ったんだしカフェで話さない?」 この子は唐突に話題を変えやがる。 「暇だし良いよ」 しかも俺はその話に乗る。だって話したかったんだもん。 「でねソイツがね…で、友達がねで」 お話と聞いていたんだが一方的な愚痴大会だった。でもなんだか楽しかった。 「ふぅ…ごめんね?なんか私ばっかり話してて」 どうやら気付いていたらしい。 「いや気にしなくて良いよ。聞き手好きだから」 俺は話すの苦手だしな。 「あのさ、…君さ連絡先交換しない?卒業式の日に交換したかったけどできなかったじゃん?」 そういえばそうだった。こんなに仲よかった女子はこの子以外居ないのに俺は連絡先知らなかった。 「ああ…そうだね」 俺たちは連絡先交換をした。 「これで何時でも会えるね!なんてね!」 俺は不覚にもときめいてしまった。そして思い出した。去年の夏に置いてきたのはこの恋心だった事を。 「俺は毎日でも会いたいよ。なんてな」 俺が楽しんでいたのは俺の恋心だったんだ。 「今日は色々ありがとう。あの変なアイツらに捕まってたら今頃どうなってたか…怖くて想像できないよ」 帰り際にこの子は深々と頭を下げてお礼を言った 「気にするな。いつでも守ってやるよ。」 「ふふふ……君のそーゆー所直らないの?まぁでも私はそーゆー所好きだけどね」 この子は笑いながらそう言った。 「直らねぇなぁ。直す気もねぇからな。そんな俺の変なクセを好きだと言ってくれるお前を俺は好きだけどな」 俺は真実とジョークを交えながら話した。 「ジョーダンも上手くなったの?」 「ジョーダンじゃ無いさ…久しぶりに会ったお前に急に言うのもなんだけど…好きだ…俺の彼女になってくれよ…」 俺は少しニヤけながら言っていたらしいが記憶がない。 「もう……君、遅いよ…私だって…好きだったんだよ?」 「遅れてごめんな…けど今からでも時間を巻き返せるか?」 「もちろんだよ!だって私たちだから…」彼女は顔を赤らめながら抱きついてきた。俺は彼女を抱き返した。 俺はいつの間にか「つまらない」と言っていた夏を楽しんでいた。それは彼女のおかげだ。不良もやめた。酒もタバコも辞めた辞めた。万引きなんてもってのほかだ。 俺はこの最高の夏に「ありがとう」と声をかけた。 すると夏はいつものように別れを告げ、来年には戻ってきてくれた。 俺の最高の夏はまだ続くらしい。
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凄い
短く終わりますが 控えめにいって 最高かよ! って感じです。