四感覚で、愛してる。
『今日はね、庭に蝶が来ていますよ!多分モンシロチョウ、でしょうか?』 嬉しそうな、妻の声が聞こえる。 きゅっと繋がれた手がブンブンと振られていて、彼女が、無邪気に笑っている顔を思い描いた。 俺は、目が見えない。 15歳の頃、兵士をやっていた時に。敵兵の刃が俺の眼球を掠め、真っ二つに引き裂いたんだ。医者は手を尽くしてくれたのだが、割れた眼球が元に戻る事はなかった。 あの時、どん底まで堕ちてしまった俺を、真っ暗な闇の中から救い上げてくれたのが、妻の蓮夜(はすよ)だった。 彼女に出会ったのは盲目になってからだから、俺は、妻の顔を知らない。 でもきっと、蓮夜の優しい温もりは、俺が一番よく知っている。 彼女から漂う、花のような甘い匂い。衣擦れの音、繋いだ手の感触や、抱きしめた時の柔らかさ。その心臓の音、血の巡りですら、俺にははっきりと知覚できる。 それは、見えなくなってから感覚が鋭くなったせいか。はたまた、俺が彼女を愛しすぎているせいなのか。 きっと、そのどちらもなのだろう。 『・・・やはりお前は、美人だな』 らしくもない台詞をそっと囁くと、彼女は心音を少し速くして、へへ、と照れ笑いをする。そのままぐいっと腰を引き寄せ、細い身体を抱きしめた。 首筋に顔を埋めて、すぅ、と息を吸い込めば、彼女は、『ふふ、こそばいです』と、また照れ笑いをする。 視覚以外の、四つの感覚を全て駆使して。俺は、蓮夜を愛している。
みんなの答え
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4感覚って何かと思ったら…
視覚がないのか…でも、奥さんのことを全力で愛してるんですね?優しい夫だ…妻になりたい…って思ったけど、この女の人じゃなかったらダメなんだろうなと思いました。 それくらいキャラクターもしっかりしていて、とても面白かったです! 次作、楽しみにしています♪