短編小説みんなの答え:2

飢餓の島で

 男の目は鋭かった。汗一つ流さず、足取りは重たかった。男の顔には深い皺が刻まれていて、それは死に際の老人よりなお深かったが、彼はまだ二十歳であった。彼は汚れた軍服を着て、大きな背嚢を背負い、折れた銃剣を持っていた。この銃剣がなかなかに重いようで、彼は何度もいっそ置いていってしまおうと思ったが、いつの間にか不思議に手放せなくなっていた。  男は空を見上げて、目を凝らした。木々の隙間から陽の光が見えた。ジャングルの底の薄暗さが嘘のようであった。雨は降っていないようであった。男は近くの木を銃剣で小突いた。彼は耐えられなくなってその木の皮を舐めたが、樹液は出ていなかった。男は、水分が自分を遠ざけているような気がした。  足元を掘り返してみたが、彼にはまるで内蒙古の砂のように感じられた。彼は土を元に戻して、木々をかき分けていった。  やがて日が落ちて、夜になった。こうなると前も後ろもわからなくなり、歩くことはできなかった。男は銃剣を抱き、背嚢を枕にして眠った。  朝になって、男は発狂した。男は銃剣を取って、自らの腹に押し当てたが、折れた銃剣では彼の腹を貫くことはできず、彼の腹をわずかに裂いただけで、その傷口からはほとんど血が流れなかった。  男は銃剣でそばの木を殴りつけて、今度は銃剣を杖のようにして、先へ進んで行った。支えなしでは倒れてしまうかのように、彼の足取りは頼りなかった。  少しいったところで、男は仲間の兵士を見つけた。その兵士は木にもたれかかっていた。男は声を振り絞って、おい戦友と声をかけたが、返答はなく、そこで兵士の肩を叩いたところ、 兵士は力なく倒れ、ハエが羽音を立てて飛び出していった。男の手にはウジが一杯付いていた。しかし男は嫌がる様子もなく、むしろ興味を持ったように兵士の亡骸に近寄った。兵士の顔は、この地獄に似合わず、安らかに死んでいったような、安堵に満ちたようであった。しかし、男の興味はそこにはなかった。兵士の口元、そこに咥えられた大きな蝉にあった。 男は、この兵士の安堵はこの蝉にあると思い、干からびた蝉に触れようとしたが、しかし、蝉と男の口の隙間から一杯ウジが出てきたので、諦めて先へ行った。  次に男は、目の前に鏡を認めた。彼は興奮気味に近寄った。彼が近づくにつれてそれは鏡から遠ざかっていった。男はそれは水であると感じた。男は銃剣を投げ捨て、飢えも渇きも忘れて水たまりに駆け寄り、水たまりが眼前に来た時、四つん這いになって、水たまりに顔を寄せた。水たまりには真っ黒い顔をした男が映っていた。男の顔は確かに黒ずんでいたが、しかし、この黒さは男のものではなく、水自体の黒さであった。だが、男はそのことを気に留めていなかった。男は水たまりに口をつけ、喉をかすかに動かすと、そのまま生き絶えた。

みんなの答え

辛口の答え

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尊敬…

きれいでしっかりした表現に惹かれました… 私も、この人みたいに引き付けられる表現で書けるようになりたいですね・・


無題

戦争の時みたいで、表現力が凄い。


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