【短編小説】友情って
「絶対あいつ詩のこと好きだよ!」 勝手に決めつけないで。 「だよね!詩がうらやましいわー。」 あんたたちは、私と翔の何を知ってるの。 「告っちゃいなよー。応援してるよ!あ、もしかしてされたい派?」 いやだーとお気楽そうに笑う彼女らに適当な笑みを投げかけ、半ば無視して去る。 「え、何?無視?協力してあげようとしてるのにキモっ。」 「それなー。独り身の私たちを哀れにでも思ってんじゃん?ウザっ。」 あっという間に手のひらを返され、冷ややかな、楽しそうな視線を向けられる。無表情で立ち去る。私も随分慣れたものだ。 翔のことが好きだとか、応援してほしいだとか、何も言っていないのに、どこでどのように間違った解釈をされたのだろうか。 後ろから、彼女らが私の悪口を言っているのが聞こえる。この距離だと聞こえることが分からないのか。それとも、わざとなのか。どちらでもいい。彼女らはバカだということが改めて分かっただけだ。 薄っぺらくて、何の価値もない彼女らの友情。意味なんてないのだろう。1人になりたくないのだろう。弱いのだろう。 翔とは小学四年生の時に出会った。私は転校生として小学校に入ってきた。転校生という異物は狙われやすい。私は、いつものように当たり障りのない交流をしていた。 だが、どこかで間違ってしまったらしい。 悪いことをした自覚はなく、不思議で仕方なかったが、起こってしまったことはしょうがない。元々すぐに嫌われる私は、いじめられてもいないし、気に留めずに一人で過ごしていた。達観した子供だった、今もだが。少なくとも自分はそう思っている。 話がずれてしまった。 翔との記憶はそこにはない。私の翔との最も古い記憶は小六の卒業間際にある。 彼と、自然な流れで一緒に帰ったのだ。 そこから翔との友情が始まった。 隣を通ったら挨拶。互いに一人の時は話し、帰る。別に普通のことだ。一人でいるよりは楽しかったし、本当は一人が嫌だったことにも気付いた。素直に私はその友情を受け入れた。 しかしまあこれらのことを思春期に入りかかった年のクラスメイトが目ざとく見つけたわけだ。もちろん噂になった。 今までは放っておいてたくせに、騒ぎ立てる彼らに、ただただ面倒くさいと思った。 「よっ。」 翔は、いつも最高のタイミングで現れる。良い意味でも、悪い意味でも。 「やっほ。」 「また詩さんは一人ですか。」 翔がチラッと先程の彼女らを見る。 「あいつらバカだな。」 死ぬほど価値観が合う翔といると、妙な安堵感がある。 「まあね。」 「一緒に帰ってやろうか。」 「余計なお世話。」 と、言いながらも一緒に帰る。 話しながら、翔を見る。 出会った頃より、随分と男子っぽくなった。背はのび、声は低くなり、喉仏がよく動く。手や、背中がゴツゴツして大きい。 彼女らがそういう対象として見るには充分で、私がそう思われるのもおかしくはない。私も大分あの人たちの心に歩み寄れるようになった。静かに心の中で考える。 私も女子っぽくなったのだろうか。 翔は私をそうやって見ることがあるのだろうか。 私が翔をそうやって見る日が来るのだろうか。 異性との友情は成り立たないのか。成り立ってはいけないのか。 幼なじみと言えるほど、長い付き合いはない。だけど一番信じている。 翔の顔を見る。 彼との友情が、少しでも分厚く、価値のあるものであるように。少しでも長く続くように、願った。