杏凛と小太鼓
チャッチャカチャー チャッチャカチャー 今、音楽室は大太鼓やら小太鼓やら、シンバル、アコーディオンの音で溢れている。決してそろっているわけでは無い。 今日はクラブの日。運動会で歌う『我らの力』を音楽クラブで毎年伴奏しているのだ。今日は初めての練習。 トントコトン トントコトコトントコトト 小太鼓のリズムカルな音。演奏しているのは5年生の夏野優。 トントコトン トントコトコトコココ 隣で下手じゃないけど下手な演奏しているのは6年生の安田杏凛。先生に手を添えられて必死になってやっている。杏凛は音楽の成績は必ず5なのだが、ピアノやらはそこそこ。でも、どうしても小太鼓に挑戦してみたかったのだ。しかし、これを全校生徒の伴奏となるとは…。と思い、杏凛は絶望した。そして、5年生の優にうらやましさを買ってしまった。 「安田、バチの持ち方が悪い。手首だけを動かすように。」 矢賀先生に杏凛が注意されている。でもなかなか上手くいかない。杏凛は自分は優秀だと思っていたが、優秀でないことを思い知った。これをごまかしてしまうのが杏凛の悪い癖なのだ。 優も杏凛と同じように注意された。優はすぐにマスターした。杏凛は絶望第二弾を心の底から感じた。 「うーん、安田さんやるなら、僕は歌でいいや。」 クラブの終わる頃だった。小太鼓をやりたい関くんからこう言われた。 「そ、そうかな?」 「うん!歌うのが一番目立つ!」 杏凛は関くんのそういう単純だけど、勇気があって、はっきりしているところが好みだった。関くんをかっこいいと感じながらも何かのプレッシャーにかけられた気がした。 杏凛は家に帰り、iPadを引き出して、『我らの力』を流し始めた。小太鼓の練習をするためだ。杏凛は少しあがり症なところがあるのでオーディションで失敗してしまう可能性が普通の人より高い。だから、準備を万全にしてから挑戦に挑むのだ。しかしこれがなかなか上手くいかない。口ずさみながらもリズムをとっていく。形らしくはなった。これで今日の練習を終わらせた。 その日から何度か音楽室に通い始めた。上手くいかないのがバチの持ち方。毎日、矢賀先生に注意される。泣きそうになりながらも練習にひたすら集中した。逃げたいけど逃げられない世界だったのだ。 オーディションの日。 小太鼓は2人選ばれる。立候補しているのは4人。その中にはもちろん杏凛と優がいる。 「じゃあ最初、大太鼓から。」 「木也がんばれ。」 杏凛は同じクラスの木也に声をかけた。杏凛は心の中で木也なら大丈夫だろうと思った。 大太鼓のオーディションが終わった。 「次、小太鼓。夏野さんと安田さんから。」 小太鼓トップバッターの二人。 杏凛は大きく息を吸い、吐いた。 心を無にして。 あっ!杏凛のリズムが少しずれた。誰だってミスはある。が、これは本番。杏凛は塩分が含まれている水がべっとりとついた手でバチを握ってただひたすらに叩いていった。 結果はいかにも。それは読者のみなさんがお考えください。 杏凛と優に幸運が訪れることを願いましょう。
みんなの答え
※きびしいコメントを見たくない人は
「見ない」をおすと表示されなくなるよ!
いい!!
成功だったのかな…?? うまい下手じゃなくて、気持ちがこもっているのかが重要ですよね。 杏里ちゃんのことそばで応援したかったなw