そう言われた気がしたんだ【短編小説】
産まれてからずっと、心になにか鎖をつけられている気がする。 何処にも行けないよう、何も出来ないよう、鎖を。 僕の名前は田中健太郎とか言うモブ臭い名前だ。 学力、運動神経、容姿、共に中の下。 家族の事はそこそこに好き、友達とも何となく上手くやれてる。 何か突発して得意な事等はなく、譲れないほどほど好きな事もなく、ただ毎日を毎日過ごすだけ。 そんなよく言えば普通、悪く言えばつまらない日々を、生まれて15年変わらずずっと続けている。 不幸ではないな。 帰る家がある。毎日ご飯を食べられる。暖かい布団で寝られる。 でも特に幸せだと感じる事はなく、死ぬ理由がないので生きている。 何処までも僕の命は軽い。 今年僕は受験生だ。第一志望はまぁそこそこな学校。ある程度努力すれば入られるような。 周りの友達や、担任の先生、家族が必死にフォローしてくれている中言うのも申し訳ないが、 僕は自分が高校へ行く意義を見つけられないでいる。 空にぽつんと浮かぶ夕日を見つめた。下校中、毎日見るこの夕日。 よくもまぁ毎日飽きずにそこに居るもんだ夕日は。 なんて事ボーッと考えていると、徒歩10分でつく自宅に着いたので、鞄から自宅の鍵を取り出す。 えっと、これは違う鍵じゃなくてキーホルダー これはハンカチ これは部活道具 これは… … 教科書や筆箱を取り出して鞄をひっくり返す。 パラパラ…と細かいゴミは落ちるが鍵が落ちてこない。 ………そう言えば鍵…持って来るの忘れたんだった……………………… 近くの公園のベンチに腰を降ろす。 親は…いつ帰って来るんだったか。 はぁ…ホントに僕って人間は… 自己嫌悪に陥りながら公園でキャッキャッと高い声で笑う小学生を見つめた。 小学生の頃に戻りたい。楽だったぁ。 あまりにも暇なので苦し紛れに今日配られた高校のパンフレットを鞄から取り出す。 「そこの高校に行くの?」 「うわっ!?」 突然響く声に驚き思わずパンフレットを落としそうになる。 声の響く方向に視線をずらすと、夕焼けに照らされる藍色の綺麗な髪をした20代の男性が僕の隣に座っていた。 …この人、気配も音もしなかった… 「俺の母校はね、新党高等学校って言ってね。今俺はそこで数学の先生をやってる。」 「え?あ、はぁ…」 男性は心底人生が楽しそうな顔をして夕日を見上げた。 僕は曖昧な返事しかできない。 母校で働く先生か…きっと才能溢れる人で、人生が常に輝いているような人なんだろう。 「君さ、そのパンフレットの高校、第一志望でしょ」 「はい、まぁ…って、なんで分かったんですか!?」 「何となく」 男性はクスクス声を漏らしながら笑った。 「きっと受かるよ。俺なんかも第一志望受かったもん」 「?はぁ…」 頭が?で埋まる。 変な人だ。 「あ、時間だ。思ったより短かったな…」 「え?」 「じゃあなぁー!」 「ちょっと待っ…!」 僕は突然走ります出す男性に手を伸ばした。 そして男性は 消えた。 神隠しのように、ぱっと消えた。 「………」 「あら、健太郎じゃない。どうしたのこんなところで!」 母の声がする。 が、僕は返事を返せなかった。 ご飯を食べて、お風呂に入って、寝る前に一勉強しようと机に向かった。 そう言えば、今日のあれは何だったのだろう。怪奇現象? 僕はふと思い出し、パンフレットを鞄から取り出す。 『きっと受かるよ』 「…」 誰かに成功を肯定された事なんてなかった。 誰かに成功を期待された事もなかった。 受かるかな。こんな僕が、高校に。 普通で、平凡で、なんの取り柄もないような僕が。 …頑張ろう。 そしていつかあの人に会いに行こう。 僕は新党高等学校っと書かれたパンフレットを机の引き出しにしまい、 少し長くなった藍色に輝く髪を束ねてシャーペンを握った。 最初は得意な数学から勉強しようかな。 鎖は外れたと、どこかの僕にそう言われた気がした。 ーーー どうも文字化けです。最後まで読んで頂きありがとうございます。 この小説は考察が必要な小説となって居るのですが、敢えて僕の解説はなしでいきます。 ですから、好きなように捉えてもらって構いません。 そんな難しい内容でもないのでね(笑) 長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました!
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小説家ですか!?
すごいです!! すごすぎます! あなたは天才ですね! とてもおもしろかったです。ありがとうございます