ゲッコウ
手錠を嵌められた手で、窓の鍵を外した。 ここは一階。 少しでも頭が回る犯人なら二階以上にするだろうから、こいつはバカだと考えて良いだろう。 必死に肌にまとわりつく恐怖を楽観的に考えることで無くそうとしている自分に笑ってしまう。 怯えていようが、何だろうが、ここから逃げ出す以外に生きる道はないのに。 幻想的な月は真っ暗な部屋に差し込み、瀟洒な演出をしている。 このまま行くと死ぬのは必定、逃げるほか道は無い。 私は窓を開ける。 涼しげな風が部屋に吹き込む。 小さなうめき声が聞こえた。 犯人の男、鹿目(かなめ)が起きそうだった。 喉から出かけた悲鳴を呑み込んで、窓から飛び降りる。 すぐに、鹿目の大声が聞こえた。 満天の星空に、紺碧の海。 どうやら、私は海の方に連れてこられたらしい。 鹿目が追いかけてきた。 私は走り出す。 何とかして逃げないと。 逃げないと。 必死に、それだけを考えて私は走っていた。 「待て!待て!久我月葉(こが つきは)!待て!逃げるな!」 耳に入る波の音。 なんと風流な。 犯罪者から逃げる場面には似合わない。 足音がすぐ近くまで来て、腕を引っ張られた。 「俺から逃げるな!」 言いながら、私を引っ叩く。 身体中アザだらけなのに。 「逃げるな!」 私は鹿目の脛に渾身の蹴りを見舞った。 鹿目が目に涙を浮かべて、膝を抱えて二度三度と飛んだ。 だが、すぐに立て直して私に掴みかかってくる。 私はその手を蹴りつけた。 手が使えないなら、頭脳と足で勝負するしかない。 次の瞬間に私が脛に蹴りを入れると、鹿目は体勢を崩した。 月明かりに紛れて、交番が見える。 私はそこに駆け込んだ。 「月葉。ご飯よ」 お母さんが私を呼ぶ。 私は勉強の手を休めて、一階に行った。 今日のお昼ご飯はラーメンだった。 テレビをつけると、ニュースがやっていた。 「鹿目真斗(かなめ まさと)容疑者は他にも余罪があるとして、吾妻(あづま)裁判官は……」 お母さんがチャンネルを変えた。 お昼の時間帯にやっているドロドロとしたドラマに変わる。 うん。やっぱり、毎日が幸せだ。
みんなの答え
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すごい
時間がないので短いですが、 とてもよかったです!
無題
助かって良かったです! それにしても主人公強いですね・・・ 憧れます!