短編小説みんなの答え:1

忘れないで

忘れないように。枯れてしまわないように。今日も俺は、絵筆を握る。 艶やかな黒髪に、柔らかな笑顔。敬礼する仕草、剣を握る細い手。 彼女の記憶を、一滴も溢さないように、キャンバスに染み込ませていく。 前世。俺は、どこかの国の兵士だった。 絵の中の少女は俺の部下で・・・初恋の人だ。 ・・・あいつは、妙な奴だった。敵に刃を向ける時でさえ、涙を溢していたのを覚えている。それでも彼女は、すぅっと、流れるように刀を振るうのだ。 泣くだけで、躊躇はしない。 涙で視界が曇っていても、太刀筋が一切ブレない。 敵兵の死体を見下ろし、涙を流すその表情は・・・まるで仮面のような、ひやりと冷たい印象を感じさせた。 それでもあいつは、優しい娘だった。 新兵を庇って怪我をするのはしょっちゅう。戦場では冷酷だが、駐屯地では花の咲くような笑顔を浮かべる。その柔和な雰囲気のせいか、基地の近くの町の子供に懐かれて、『兵士のお姉ちゃん』なんて呼ばれていたな・・・。 強くて、優しい彼女の姿を目にする度に。俺は、彼女に惹かれていった。 何かと理由をつけては彼女の姿を見に行き、たまに雑談をして、お茶をしたりもする。そんな、彼女との暖かい時間が、いつしか心の支えになっていた。・・・ただ、側にいられるだけで。それでよかったんだ。 だが、平和な時は長く続かない。 彼女は、戦死した。 任務の帰路、敵の奇襲に合い、他の兵士を伝令に行かせて、一人で100近い数の兵士を相手に戦ったのだそうだ。 驚いた事に彼女は、その場にいた敵兵を、たった一人でほぼ全滅に追い込んだ。だが背後から忍び寄る敵に気付けず、あっという間に・・・ 無念。怒り。悲しみ。怨み。 色々な感情がごちゃ混ぜになるような心地を、俺は味わった。 何故、彼女に気持ちを伝えておかなかった?何故、俺も任務に同行しなかった?何故、彼女を守れなかった・・・? 俺が、弱かったからだ。 ・・・ここまでははっきりと記憶があるのに、そこから先はどうしても思い出せなかった。 優しくて美しい彼女は、今、どこかで生きているのだろうか。 ・・・俺の事は、もう忘れてしまっただろうか・・・ そっと、キャンバスの中の彼女を見つめる。 優しい微笑みが、勿忘草の中で揺れていた。

みんなの答え

辛口の答え

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すごいの一言。

え、ちょっと… 解答なくてびっくりしました。。 こんなにいい作品ですよ?? 皆に見せて回りたいくらいです(( では~!


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