1度枯れてしまえば、もう
「ただいまー」 扉を開けても、なにも返事がない。 そのくせ、男の一人暮らしには広すぎる家。 リビングを通って寝室に行くと、これまたシングルではなく、タブルのベッド。それを見て、何度目かわからないため息をつく。 少し前までは、出迎えてくれる妻がいたのだ。 でもそれは自らの浮気によって、この家から消えた。 その、つい、出来心で。 本命はちゃんと、お前だったんだよ。 そんな無意味な言い訳すら言わせてもらえなかった。 ある日家に帰ると、そこはもぬけの殻で。食卓には二つの紙と、くすんだ指輪。 指輪は、俺の薬指のそれと見分けがつかないのに、いざ並べてみるとすごく小さく見えて。 二つの紙は、妻からの手紙と離婚届だった。 離婚届も手紙も、彼女の几帳面な字が並んでいた。 手紙の内容なんて、見なくてもわかった。浮気してたでしょ、離婚しようという内容だろうと。 いざ読んでみるとその手紙は、何故か申し訳なさ気な雰囲気で。ごめんなさい、という文字を見て泣きそうになった。 謝るのは、俺じゃん。 なんでお前が謝るの。 謝るならせめて。 (勝手にいなくならないで欲しかった…っ) そんな身勝手なことを思いながら、小さな指輪を握り締めた。 あれからどれくらい経ったか、1日も欠かさず数えているくせに、考えたくない。 家に、彼女の痕跡は、思ったよりも残っていなかった。洋服やメイク道具はもちろん、彼女の歯ブラシのストックでさえ、なくなっていて。 ほぼ唯一残っていたのは、彼女と一緒に買ったサボテンだった。 部屋に植物を置くと風水的に良いの、と言い出した彼女に連れられて、植物を買いに行った。 多肉植物だと、育てるの楽なんだってー!なんてはしゃいでいた彼女。結局、1番楽そうなサボテンにしようと決めて、買って。 世話は彼女がしてくれたけど、俺も一応、ちょっと調べた。 日なたに置いた方がいいとか。 水のあげすぎは良くないとか。 その時、サボテンの花言葉を知った。 『枯れない愛』 良い花言葉じゃん、くらいにしか思っていなかったことを思い出す。 思い出に浸りながら、ベランダのサボテンに水をやりに行く。 彼女がいなくなって、俺がサボテンの存在に気づいたとき、サボテンは枯れかかっていた。 すぐに調べ直して、胴切りの作業をして、なんとか復活させた。 彼女との思い出を、一つで良いから残しておきたくて。 ―――『枯れない愛』を、枯らしたくなくて。 …ずっと放っておけば、いくら枯れにくいサボテンでも、枯れてしまう。 それは愛も同じ。 もう一度きちんと向き合って、愛を伝えて。他に目なんかくれないで。 そうすれば彼女も、なんて馬鹿なことを考える。 この愛を枯らしたのはお前だと、俺を拒むサボテンの棘が言っているように思えた。 END 読んでくださりありがとうございます!楽しんでいただけたら幸いです。 臣です。おみ、と読みます。 感想やアドバイス、お待ちしています。喜んで読みます! 応援してくださる皆さん、大好きです…! ※なりすまし、盗作等はとても悲しいです。絶対にやめてください。
みんなの答え
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はろ。11才くーぽんっすー!
プロかと思いましたー! 枯れてしまって残念です。。。 この物語に逢えてよかった!! すごいいいと思います! 儚いお話だけど、 花言葉も用いられて素敵! (語彙力は海に行っちゃいました ○o。.(←泡だよ。)) 臣さんがんばっ! 年下からすみません!
何かこのシリーズ好きです。
どうも、鈴木爆撃機です。 臣さんの「手紙」と「花言葉」のシリーズ、好きです。 あと、また聞いちゃいますけど、臣さん中学生ですよね?あと、女性ですよね? 何で男の独り暮らしの話を書けるんですか? 想像力凄すぎませんか?
凄いです!!!!!
こんにちは。めめこじのことが大好きすぎるめめこじ担です! 初めて臣さんの短編小説読ませて頂きました! 本物の小説家さんのようで、表現力や文章力が、とても凄いです!!!!! 臣さんのファンになりました! 次回も楽しみにしています!
尊敬!
初コメです。いつも沢山コメント来てて凄いなーって思って読んでました! 今回も素晴らしい作品ありがとうございます!ほんとに題材から何まで勉強になるしお手本にしたいぐらいです。次回も楽しみにしてます!
安定の淒さ。
今回も、とても良かった・・・。 花言葉ってホン卜好き。意味がつまってる! そう思うと、花って偉大! 臣さんのは、花の良さが分かる。 次作楽しみです!
良かったです!!!
臣さん!! 素敵でした!! もう神様・臣様・仏様!!って感じでした!(語彙力) 次回作楽しみにしてます!!
綺麗な文
綺麗な文ですが、気になった書き方が数点。 ・「…」は「……」にしましょう ・ーー『枯れない愛』~→ ──『枯れない愛』~ ※──(罫線)です。 ・~なんだってー!なんて~ →なんだってー! なんて~ 「!」「?」の後には空白を開けましょう。 これからも頑張ってくださいね。
【感想】サボテンの擬人法、ダブルベッド
短編で読みやすい内容のうえ、ストーリーと作者の伝えたいことがきちんと伝わってきて、とてもよいと思いました。普段読んでいるもので、こういった主人公の思いを何かに表したりすると、くどくなったり多少強引に感じてしまったりして、読むとき疲れてしまうのですが、ただ、花言葉を並べるだけでなく、主人公そのものの意思やストーリーへの関わりにきちんと繋がっていて、たいへん素敵な短編小説だと思いました。 基本ルールと言ってもいい、「会話文の最後に句点(。)はつけない」ということを守っており、作者の方もちゃんとした知識があるのだと、これからの作品にも期待です! それから、これはワガママかもしれませんが、出ていってしまった妻との前の暮らしや今の思いももっと書いてほしいと感じました。 彼女の痕跡と共に存在すら消してしまったかのような主人公の家は一体どんなに寂しかろう、虚しかろうと感じさせる描写も個人的にはもっと付け足してほしいと思いました。 主人公視点なので、主人公の口調がそのまま地の文として工夫されているので、とても主人公に感情移入しやすいですね。 面白い小説、ありがとうございました!
すごい!
感動しました!! 私も物語は大好きなのですが、ここまで簡潔にまとめた上で、読み終わった後も深い余韻が残る作品に出会えるとは!! 最高です!
素敵ー!
あーやです^^* とっても素敵です! もう凄いとしか言いようがない…! 臣さんはいつも優しいコメントくれるし、読者に対する対応が丁寧で優しい! それが、小説に優しくて暖かいイメージを与えている気がします(*^^*) 実る恋愛じゃなくて、枯れていく恋愛も綺麗に書きこなせるなんて、凄いです! 次の作品も楽しみにしてます!