真珠貝とナイフ
どくん、どくん、と心臓が騒ぐ。 俺の手には、ナイフが握られていた。 『助けてーーーっ!!』 彼女の悲鳴を聞いた途端、身体中がぐわっと熱くなって、バカみたいに力が湧いてくる。 殺せ 殺せ 何としてでも 彼女を守れ ・・・自分の命に 代えたとしても 気がついたら勝手に体が動いて、彼女に覆い被さっている男を、俺は刺し殺していた。 『・・・』 男の死体を脇に退けて、彼女に怪我がない事を確認する。 はっ、はっ、と、少し浅い彼女の呼吸の音。それを聞いている内に、だんだんと身体中の熱が冷めていく・・・ 震えている彼女はぶつかるようにして、俺を抱きしめた。 『ごめん、ごめんね・・・!私の、私の、せいで・・・!ごめんなさい・・・!』 ・・・初めて人を殺したというのに、俺は今、ひどく安心していた。不思議な位、罪悪感も恐怖も感じていない。 彼女が、生きてここにいる。 彼女の命を、守る事ができた。 その事実さえあれば、充分だ。 『・・・お前が謝る事は、何もない』 ここは、貧困を極めたスラム街だ。人を殺そうが襲おうが、それで罰される事はない。 そっと、彼女の背をさする。 彼女が【綺麗】なままでいられるなら、俺が彼女の分まで手を汚そう。 血にまみれた俺の手を、彼女は嫌がるかもしれないけれど・・・ 『俺は、お前を守る。・・・自分の命に代えたとしても』 彼女は、美しい人だ。 汚れを知らない、真珠みたいに真っ白な人。 俺は、醜い奴だ。 血にまみれたこの手では、彼女に触れられない。 彼女は、それでも俺を抱きしめる。 俺がいくら逃げようとしても、放してくれない。 駄目だ。俺なんかに触れたら、綺麗なあなたが汚れてしまう。 愛してるの言葉さえ、彼女の鼓膜を血で濡らしてしまう気がして、俺は言えない。 彼女はいとも簡単に、俺に向かって愛していると言う。 その声は、俺の鼓膜を震わして。 じんわりと、心の中に溶けていく。 言いたいのに、言えなくて。 あなたを傷付けてしまうのが、怖い。 彼は、綺麗な人だ。 自分を犠牲にしても誰かを守れる、閃く刃のような人。 私は、酷い人間だ。 自分が壊れるのが嫌で、殻に閉じこもることしかできない。 彼は、それでも私を見つめる。 でも、私が抱きしめたら、彼は逃げていこうとするの。 ねえ待って、行かないで・・・側にいてよ。 彼はなかなか、愛してると言ってくれない。 どうせ、また自分を卑下しているんでしょう?私には勿体ないくらい、強くて素敵な人なのに。 あなたの視線は、暖かい。 言わない気持ちが、全部全部籠った、優しい目。 あなたが言わない分、私が言うの。 大好きよ、一緒にいてね、って。 酷い私を、醜い俺を。 あなたは、赦してくれますか?
みんなの答え
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すごすぎる!
月灯さんて、人を引き付けるような題名(あってる?)を書きますよね!尊敬しかありません! 今回の小説も凄いです! 二人の仲がいいし、相手にこんな自分はふさわしくないって思ってるけど、相手に対しての愛情はとても深い、そんな二人の姿、(性格?)がとても好きです! そして投稿ペースが早い!いつも新鮮な小説が読めてうれしいです!これからもバンバン小説産み出してください! (年下ですすみません今頃気づきましたすみません)
うおお…
なるほど!すごい!綺麗でもあり、殻に閉じこもってもいる真珠。人を殺してしまう道具でもあり、人を守れる道具でもあるナイフ。どちらのたとえもあってるなあ・・・
すっげええええええ
こんにちは。鈴音たまです(・ω・)ノ やべええええええええええええ 語彙力皆無の私とは大違いですね…\\\\(^o^)/アハハアハハ 彼女も彼のことを自分より美しいと思っているんですね…。 結末が予想出来なかった…私理解力ないかr 自分の書いた小説が恥ずかしい(投稿したこと一回しかないけどな) では!!
感動できる~(T_T)
男の人が女の人のために人を殺した、というところがあまりよくないけど感動しました! 次の小説も楽しみに待っています!