灰に溶け込んだ、その赤色は
灰色を帯びた藍の空を見上げる。 酷く廃れてしまった街には、崩れてしまったコンクリートの残骸と、それに必死にしがみつくやけに元気な緑色をした蔦のみしか残っていない。 俺はレイ。政府直属の組織である、戦争残留物処理社の社員として、この廃墟の街に来ている。 「報酬が跳ね上がるからって、こんな街に来るんじゃなかったな…」 この街は見た目が腐っているだけでなく、中々に強い鼻をつくような異臭が漂っている。 今回の目的はただ一つ、この街に生き物が残っていないか確認することである。 明日になれば、これらのコンクリート達は全て砕いてしまう。万一その中に生物が紛れ込んでいたら、悲惨どころでは済まない。 「こんなところに生きれるようなバケモンなんて、そうそういねえだろうよ……ん?」 俺の耳は、この廃れきった街の空気を切り裂く、小さくも力強い歌声を確かに拾った。小さい少年の声だ。 「参ったな…」 歌声のみを頼りに、声の主を求め、俺はふらりふらりと歩き出す。 瓦礫をどかしながら歩いていくたび、その歌声は微かなものから確かなものへと変わっていく。 「~♪」 「っ見つけた!」 俺の目が捉えたのは、絹のような髪と宝石のような瞳をした、1人の少年だった。詳しい年齢は分からないが、きっと1人でこんなところにいられるような年齢ではないはずだ。 「こんなとこで何してんだよ」 「ふふっ、また見つかっちゃった!」 「はぁ?」 少年の訳の分からない発言に、俺はついおかしな声を漏らす。 「それじゃあお兄さん、また明日も僕と遊ぼうね!」 『また』? …そうだ、これはまた夢なんだ。 この子供は俺の少年時代。戦争で家族を亡くした俺はただ1人、廃墟の街で誰かが迎えにきてくれるまで歌い続けていたんだ。 いつの日かお国の奴が来て、俺を施設に入れた。あと少しで、見つけてもらえないところだったらしい。 この子供…レイは、国の人間に見つけてもらえなかった俺。 つまり、子供のまま死んでしまった俺だ。 俺は、小さい頃の俺をしっかりと見据える。 「絶対助けるからな、レイ」 「~♪」 俺は、本当は聞こえているくせに、まるで聞こえていないかのようにまた歌い出した。 灰に溶け込むその赤い瞳は、しっかりと空を見つめていた。