塔
…のように、ポリエチレンの袋に少量のエタノールを入れ、空気をぬいて口を閉じた。次に、図2の… 「あ゛ーわかんねー!」 思わず理科のワークをベッドに放り投げて叫ぶ。白紙のページがパラパラと風になびいている。 「テスト勉強だりぃ…」 俺は見ての通り、テスト勉強中だ。しかし、自慢気に言うのもなんだが... 全くわからない。 「はあ、早くテスト期間終わんないかなあ」 鉛筆を握ったまま、椅子をくるりと一回転させ窓の外へ視線を向ける。 今日もおなじみの、平凡でパッとしない景色が見える。 いつも通りの物干し場、 いつも通りの公園、 いつも通りの野良猫、 そして、いつも通りの塔... 塔… 塔!? 転がるようにして窓に駆け寄る。 思わず目を疑った。 そこには確かに、雲にとどきそうなくらいの巨大な塔が立っているのだ。 「な、なんだよこれ...!」 しかも、隣町のとかならまだわかるが、これが建っているのはほんの俺の部屋から十数メートル先だ。 周りの小さな家々を見下ろすようにして、ふてぶてしくしているその様子は、夢なんじゃないかと疑わざるおえない。 よし… 塔の正体を確かめに行こう。 そう思うやいなや、俺は鉛筆を投げ捨てて靴をつっかけた。 塔に向かって一目散に走ってゆく。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 数分後。 ついたのは近所の空き地だった。 誰もいない。 俺は改めて塔を見上げる。 …あまりの高さに目がくらみそうだ。 すると… 「ん?」 塔の側面に何か四角いものがある。 よく見ると扉のようで、ほんの少しだけ開いている。 俺は中をのぞいた。 暗い、何も見えない、そして何か… 匂いがする。何だろう、 …懐かしい気持ちになる。 これは、 入るしかないな。 俺は扉に手をかけた。 扉は音もたてずにゆっくりと開いた。 入ると真っ先に、匂いで体が包まれる感覚がした。 視界が真っ暗闇に染まる。 不思議と安心してしまう。 いつの間にか俺は、引き返すことなど少しも頭になくなっていた。 吸い込まれるように歩く。 足音が少しずつ、遠く、聞こえなくなっていく。 ──そのとたん、片足がふわりとした。 足元が抜け落ちたのだ。 大きな穴に、俺は吸い込まれていった。 ふわふわして、とても心地良い。 そしてそのまま… 意識が途切れた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ …今日もおなじみの、平凡でパッとしない景色が見える。 いつも通りの物干し場、 いつも通りの公園、 いつも通りの野良猫、 …何一つ、 変わったものはない。
みんなの答え
※きびしいコメントを見たくない人は
「見ない」をおすと表示されなくなるよ!
続きが…!
続きが…!気になります! 本当に何にも変わっていなかったんですかね?気になります!