短編小説みんなの答え:2

衝動には逆らえない

ーーふと、叫びたくなる時がある。 学校にいる時、家にいる時、帰路に着いた時、いろいろな時にいろいろなことを思い出して、自分が普通ではないことを思い知って、叫びたくなる。 だけど、叫ぶ場所が無い。 少しでも叫ぶことができたら、私はこの世界でも生きやすくなるのだろうか。 「蘭(らん)さん、手が止まってるよ」 かかった声に私は慌てて問題用紙を見た。 “極座標平面において”から始まる例題を読んだ私の目は点になった。 ちっとも分からない。 ポカーンとしているのが樹(いつき)くんにも伝わったのか、樹くんが 「極座標における回転体の体積公式。基本さえ押さえれば簡単だよ。もしかして、基本を学ぶ日に休んでた?」 「うん……」 禁則事項に該当した。公式を習う日に私は、「機関」の人に呼び出され、成績や学校生活について根掘り葉掘り聞かれていた。 私は超能力者が属する「機関」というものに入っている。能力についてうっかり漏らさないようにストップがかかるようになっていた。 私がこの世界では異分子のように、樹くんも普通の人間ではない。私と同じ超能力者、ただし、「機関」には所属していない。「機関」のお偉いさんたちは適当に超能力者を選んでいるらしい。 ねえ、お偉いさん、恋愛は自由ですか? 私は樹くんの授業により、公式の基本は理解した。 それを微笑ましく見ていたクラスメイトであり、天文部部長でもある美菜子(みなこ)が言った。 「もうお開きにしようか。中間テストも近いしね」 「じゃあね、蘭」 「じゃあね、美菜子」 「先輩、また明日」 「またね」 「蘭先輩、さようなら」 「じゃあね」 天文部部員、総勢六名。 私は美菜子や後輩たちに挨拶しながら正門前に着いた。 私と樹を除く四名の姿は見えなくなった。 「蘭は普通の人間なの?」 樹が私にそんな言葉を投げてきた。 「禁則事項です」 そんな言葉が口をついて出てきた。 樹が私に訝しげな視線を送る。 私は笑みを作ると、 「普通の定義を教えて。人間に普通も何もないと思うから」 「世間一般の普通だよ。不思議な力を持たず、ほどほどに楽しい学校生活を送り、ほどほどの企業や役所に勤める普通だよ」 「樹くんは普通なの?」 二拍遅れて答えが返ってきた。 「普通じゃないよ」 そして、樹くんの前にオレンジ色のバリアが出来た。 樹くんはそういう力を持ってるんだ。宙に浮いて移動できる力を持つ私より有効に使えそう。 樹くんはひどく思いつめた表情をしていた。 一般人の樹くんにはこの力を持つということは自分が人間ではないと言った気持ちを抱かせたのだろう。「機関」に所属することで多くの仲間と安心感を得た私とは違う。 まるで、「機関」の存在を知るまでの私のようだ。ふとした瞬間に叫びたくなって、叫ぶ場所がないからそれを必死に飲み込む。飲み込むからさらに苦しくなる。 すごく勇気のいることを樹くんは私にやってくれた。 私もそれに応えないといけない。 私はジャンプをした。私の体はそこで止まる。アスファルトに落ちることはない。 樹くんが目を見開いた。同時にバリアも消え失せた。 「俺と……同じ?」 私はトンッと地面に着地すると頷いた。 「さあ、どうだろうね?」 ああ、また禁則事項に該当した。 話が噛み合わないが、樹くんには私が言いたいことが理解出来たらしい。 凄く、凄く嬉しそうに樹くんは笑った。無邪気で高校三年生らしくない笑み。 あ、これは樹くんが悪いよ。 ふとした衝動が私を襲った。 ねえ、お偉いさん、恋愛は自由ですか?さっき問いかけたことをもう一度問いかけた。 衝動には逆らえない。 叫びを溜め込んで、溜め込んで、山に駆け込んで思いっきり私は叫んだ。その瞬間、私は「機関」の存在を知った。今度、私が知るのは「機関」という存在ではない。 「私、樹くんが好き」 樹くんが目を見開いた。そして、まるで、虹を見た子供のように微笑んだ。 「俺も蘭のことが好きだよ」

みんなの答え

辛口の答え

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投稿日から離れているけどごめんなさい

特別で不思議な力を持っていることを話すのは禁止されていても、 好きな子に聞かれたら絶対に話してしまいますよね。 話したら機関をやめないといけないとしても。 蘭さんの気持ちがわかります。


わあああ!!

樹君イケメンなんだろうな…(( 失礼いたしました。 わたくしということが……。 私全く語彙力ないので憧れます。。 ではまたどこかで!!


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