おなじゆめ
春の日。 君が振り向いた。 そして、 「だいすき」 そう笑っていた。 そんな馬鹿な夢を見た。 スマホの通知音により目を覚ます。 やけに静まり返っているこの部屋には、俺の愛読書である小説と、彼女がくれた栞が乱雑に置かれていた。 もう一週間ぐらいこのまま放置していただろうか。 片づける意欲が沸くことはなく、ただ、それらをじっと見つめた後、ため息を吐いて冷蔵庫へ向かった。 開けた瞬間、涼しげな冷気が発せられ、俺の眠気は吹き飛ばされそうになったが、何とか正気を保ち、もう殆ど何も入っていない中身を見て、ため息を吐いた。 そして、すぐにまたパタリと閉じた。 大好きな彼女が死んでから、もう一週間も経ってしまった。 これを短いと感じるか、長いと感じるかはその人によることはわかっているが、俺はこの期間をとても短いものであると考えている。 俺は冷蔵庫の下の方から、よく冷えた酒を取り出す。 彼女の死を忘れたくて、一気にぐいっと酒を呷った。 「……はぁ」 きっと彼女は、ずっと俺の心の中で、俺を呪って、永遠に愛を囁いて、そして俺を絶望させるのだろう。 別にだからと言って、俺が死にたいと願うことはない。ただ、自虐の言葉を俺に向かって叫ぶだけ。 この先が思い知れた俺は、せめて、今だけは幸せでいたくて、すべてを忘れられるように酒を尽きるまで飲み干した。 彼女が俺に恋愛感情を持っていたのかはわからないが、それでも確かに俺は彼女を愛していた。 わざわざ彼女を夢に出してまで告白させようとする俺の脳みそはきっと愛情を欲しているのだろう。だがそれが潤うことはない。ずっと乾いたままだ。 ふと気になって、スマホに届いていたメールの内容を確認する。 彼女の家族からのものだった。 『 さん、もしよろしければ娘の葬式に来てくださいませんか? 娘が貴方のことを嬉しそうに話していたもので、ぜひ』 俺はそのメールを見て、少しの間沈黙すると、『すみません、忙しくって行けないかもしれません』と返信して、スマホをベットへ投げた。 俺に彼女の葬式に行く資格はない。だって、結局、彼女との約束は果たされていないままなのだから。 約束、そう、彼女が亡くなる一週間前に交わした約束。 『一緒に生きよう』 その約束は永遠に叶えられることはない、だって彼女は死んでしまったのだから。 だから俺は約束を破ってしまった、彼女がいなくなってしまい、俺は約束を果たすことは永遠にできなくなってしまった。 「ごめんな」 そうぽつりと呟いた時、俺の目からは何かが零れていた。 水だ、それもしょっぱい、 涙だ。 「ごめん、本当に、お前が病気だってこと、分からなくて」 突然病によって命を失ってしまった彼女のことを、俺は何もわかっていなかった。 ぜんぶ分かっている気でいたのに、彼女が欲しい誕生日プレゼントを知っていたぐらいでは、ぜんぶ分かっていたとは言えなかった。 ただ俺は泣いて、酒を飲んで、そして眠った。 このまま目を覚まさなければいいのに、そう願って。 ある暖かい春の日。 私たちが二人で歩いていた時、突然君は振り向いた。 「どうしたの?」 私がそう問いかけると、君は悲しそうに笑って、そして言った。 「だいすき」 死の直前、私はそんな馬鹿な夢を見た。 駄文ですが感想を貰えるととても嬉しいです。
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もう、泣く・・・・・・
もう、読み終えた瞬間泣きそうだった・・・・・・。 彼女さんも同じように、彼のことを想っていたんだね・・・・・・。文章も読みやすくて、描写もすごく上手でした!