短編小説みんなの答え:3

僕だけの言葉で。

もしかして死んでるんじゃないかと、彼の顔の前で手を振って見せた。 「え、なに?」 「いや、またぼけっとしてるからちゃんと生きてるかなって」 ダイニングテーブルにペンを持ったまま頬杖をついて、製図らしきものに目線を落としている彼。私が言うと、つまらないとでも言いたげに口角だけ上げた。目が死んでる、怖い。 2年前、私がインテリアプランナーとして働く会社に、1つ後輩の彼が入社してきた。高校と大学は建築学科を専攻し、美術部に在籍していた彼。二級建築士の資格を持ち、いまは働きながら一級を目指しているそうだ。 「一級に合格するのと、先輩を落とすの、どっちが先ですかね」 他人事のような後輩の言葉で、ちょろい私は一瞬で意識させられ、今では恋人になってしまった。普段表情を出さない彼、後から聞くと、あのセリフはかなりの賭けに出た告白だったらしい。遠回しすぎて、当時の私は「さあどっちだろうね」と適当を言いかけた。危ない。 表情に出ない、あまり騒がない彼は、入社直後の自己紹介でちょっと緊張気味になっていたことが、今では珍しいと思えるほどだ。多分、いかにして私をからかうかしか考えてない。 「なんでにやけてんの、怖いよ」 「いや、綺麗な顔してるなと思って」 「…ああ、そう」 反応薄い、心折れる、と、付き合いたては思っていたが2年経つとそうでも無い。本当に機嫌が悪い時は冷蔵庫から私のお菓子が消える。ストレス発散に甘いものも必要だよねってそんなの関係ない返せ。まあでも後から謝ってくれるからやっぱりちょろい私は許せてしまう。あまあまだ。いやでもちょっとは笑えよと思いはするけど。 「勉強難しい?」 「うん、二級と比にならない。頭おかしくなる」 「インテリア分野だから大変さわかんないなあ」 「インテリアはそれはそれで、なんて言うか、センスとかそういう難しさがあるでしょ?それは僕も分からないから、」 凄いと思うよ。 最後、声が小さかった。 でも、こういうところ。自分だけが大変だ、とかそうやって周りを下に見ないで、他の人は他の人で頑張っている、もちろん自分も自分で頑張っているって両方認めて、ちゃんと線引きしているところ。ここが彼の好きなところだ。 「え、最後なんて?」 「聞かせるつもりなかったから忘れていいよ」 意地悪そうに笑う彼に、「凄いとか言ってくれるだ嬉しいー」と言うと睨まれた。 淹れておいたコーヒーを彼の作業の邪魔にならないように置く。そういう時はわざわざ顔を上げて「ありがと」と一言くれる。もういくらでも淹れてあげたいと思っちゃう。 私も自分のカップに注いで、彼の目の前の席に座ったとき。 「…あのさ、」 彼がいきなり手を止めてこっちを見た。いつもはぼんやり何考えてるのか分からない目が、今はしっかりと私を見据えている。表情にいつもの余裕はなかった。 「え、はい、どした」 私も数センチ持ち上げたカップをテーブルに置き直して、視線に応えてみた。 最初は決意を固めたような目をしていたけれど、また少し目線を落として黙った。私はなぜか、入社直後の自己紹介の時の彼を思い出す。 「僕、…雰囲気づくり、とか、あんまり得意じゃなくて、」 「…え、うん」 「あの、ストレートに言うのもさ、苦手なんだけど、」 「だろうね」 告白があれだったもんね。 「そこ突っかかってこないで。これでも緊張してるんだよ」 わかってる。私だって緊張を紛らわすためにわざと言った。 そしてひと呼吸置いたあと。 「僕と、苗字、お揃いにしない?」 …え。 苗字、お揃い、僕と…えっと。 脳内の検索欄に打ち込まれた文章を解読するまで3秒、意味を理解するのに3秒、実感するのに3秒。 「と、遠回し!」 たっぷり10秒ほどフリーズ してやっと言ったのがこれ。我ながらもうちょい他に言うことあるだろと思ったが、これが精一杯。いや、全く予想してなかったわけじゃないけど。そろそろかなとも期待していたけど。 「え、ごめん」 「あ、いや、あの、て、定番じゃなくて、素敵だと、おも、思います」 褒めてるのか馬鹿にしてるのか。 返事はもちろん決まっているが、ここで私が普通に返しても面白くない。 「こちらこそ、毎日おかえりって言います」 謎の遠回し合戦が終わる。いや、始まるのかもしれない。 「いつも何も考えてなさそうなのに、まさか、そっちから言ってくれるなんて」 「褒めてないよねそれ」 「いや、私から言うことも結構覚悟してた」 「…馬鹿にしてる?」 翌日、なぜか冷蔵庫から私のお菓子が消えていた。 ーendー 自分だけの伝え方が見つかりますように。

みんなの答え

辛口の答え

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やば

このふたりの関係好きすぎなんだが! 遠回し合戦これからもやって欲しい、 てかこのふたりの結婚後の微妙な距離感と?何気にラブラブな生活を見てみたすぎる とても好きです!また書いてください、!


都色さん!

こんにちは♪元美衣菜の琉希です! 都色さんの短編小説を読むのは2回目です! 覚えててくれたら嬉しいです! 8月1日改名予定です(*^^*) *・*・*・*・本題*・*・*・*・ 今回も面白いなあと思って読んでいたら 都色さんでした(*ノω・*) 「僕と、苗字、お揃いにしない?」 というフレーズが私だったら思いつかないので スゴいと思いました! 都色さんは言葉の引き出しが豊富で憧れます☆ 誤字脱字ありましたらすみません。 参考になれば嬉しいです\(^o^)/


素敵、、!

こんちゃ みうです 最後の 「自分だけの伝え方が見つかりますように」 って めっちゃいいんだけど 感動しちゃった ばいちゃ


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