出立
玄関の扉を開けると、冷ややかな夜の匂いが鼻先を掠めて通り過ぎていった。 息を殺しながら外に出て、音を立てないように、そっと扉を閉じる。 思いの外、緊張しているのかもしれない。生まれ育った屋敷の門構えを見上げながら、ぼんやり思う。何だか夢の中にいるようで、今ひとつ現実味がない。 私はもう、二度とここには戻らない。 不確かな決意を固めるようにして、小さく呟いた。 時刻は早朝。ワンピースの裾を翻しながら、まだ真っ暗な畦道をひた走る。最低限必要な荷物を詰め込んだトランクが、体が揺れる度にガタガタと鳴いた。 待ち合わせの場所を脳内で復唱する。約束の時間に、少し遅れてしまった。今はとにかく、急がないと。 走っている内に、待ち合わせの場所が見えてきた。 街の外れにある廃墟。その門に凭れ掛かって立つのは、私と同じようにトランクを抱えた横顔。 彼が、こちらに気づいて振り向いた。 凛と涼やかな、切れ長の瞳。私を見つめる時はいつも、彼の瞳はやわらかに解ける。 「やっと来たか」 いつもと変わらない、落ち着いた声。優しい掌が、ぜえぜえと息を切らす私の肩を支えてくれた。 「走って来なくても良かったんだぞ?」 気遣わしげに眉を顰める彼に、どうにか笑顔を返してみせる。 「だって、1秒でも早くここへ来たかったんだもの」 汽車が出る時間には、まだ早い。 朝一番の便に乗って、出来るだけ遠くへ行く。それ以外何一つとして決まってはいない、行き当たりばったりの逃避行。 今にも揺らぎそうな気持ちを押し隠しているのは、きっと彼も同じだろう。 私達はこれから、逃げ出すのだ。 自分達の出自も、名前も、生まれ持った運命でさえも投げ捨てて。 微笑み合って、離れないように手を繋ぐ。それだけで、もう言葉は要らなかった。 白み始めた空に向かって、同じ歩幅で歩き始める。 願わくば。 この旅の結末が、心から笑い合えるようなものでありますように。
みんなの答え
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愛の駆け落ち…的な!?
ああ…!なんというか、こう… その…なんというか…朝じゃなくて…夜の… 爽やかというか冷たい、とにかくエモい感じが伝わりました!! 多分家柄的に恋愛を禁止?された感じで、 愛のためのその運命から逃げる…ってことですよね。 すごいロマンティックですねぇ。尊敬です。 主人公の“彼”を愛しているという心が伝わりました。
めっちゃ上手だね!!
Hi(^^♪My name's Uno(*´・ч・`*) ☆*: .。. o本題o .。.:*☆ めっちゃ上手だね!! Have a nice day(*^^)v Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪
表現が好き
数年ぶりにここにきて短編小説が復活してたからみてみたら 「月灯」という名前をみつけてびっくりしました! 昔すいちゃんを応援していた秋菜です 少しだけ感想を伝えさせてください! すいちゃん…!?と思い覗いてみたら 小説内の表現がすごいすき! 初めの身の回りの表現が上手すぎて風景が浮かんでくるような気がしました! 僕もまた書いてみようかなと思わせられるような最後まで見てて飽きない作品でよかったです! 次の作品もまってます!
うますぎる!
こんにちは!((おはようかな?こんばんはかな? 透夏です!((名前覚えてくれると嬉しいな! #本題# えっと、あの、文章力がすごすぎる! あと、表現がうまい! 作者さん、国語できそう! じゃあね!