短編小説みんなの答え:2

あなた、起きなさいよ

毎朝私は夫であるハルトを起こしに行く。ハルトはいつも私を愛くるしい目で見つめ、頭を1回撫でて笑顔で「おはよう」と言ってから起きる。 それから二人でリビングへ行き朝ごはんを食べる。ごはんを作るのはハルトの役割なので私はテレビを見て待つ。 この時間はちょうどイヌの紹介がされている。イヌは馬鹿っぽくて可愛らしいと思う、馬鹿っぽくて。 ちょうど朝ごはんが出来たようだ。今日は…鮭!私の大好物である。さすがハルト! 朝ごはんを食べるとハルトは服を着替えて“会社”へと出かける。それを見送るのも私の仕事だ。もちろん行ってきますのちゅーも忘れない。 ハルトが出かけたら私も身だしなみを整えて外へ出る。週に一回会議があり、そこでその週の報告などをしなければいけないのだ。会議後は帰っていいのだが、ほとんどは帰らずに情報交換や雑談をする。 そういえば、例のイヌの紹介コーナーにこの前少しだけ私の友達のルナが出たことがある。同居人であるハルトの妹のナツナちゃんがイヌを飼っていて、あのコーナーに応募したためルナも少し写ったのだ。黒い艷やかな毛が綺麗で美しい自慢の友達である。何となく今日はルナと少し話してすぐに帰ることにした。 家に帰るとハルトが先に帰っていた。いつもより早い帰りだ。でも玄関で寝るなんてさすがに行儀が悪いんじゃない? 起こそうと思い、ハルトの体に触れるととても熱くなっていた。だから、私は何とか必死に水をかけた。水は苦手だけど今はそんなことはどうだって良かった。 その間に一度だけハルトが私の名前を呼んで私を見つめてくれた。でもまたすぐに目を瞑ってしまった。 あれからどれほど経っただろうか。ハルトの体は熱いどころか冷たくなってきた。いつまで寝ているつもりだろうか?勝手にご飯やお菓子の袋を開けて食べちゃったのよ、怒らないの?なんで起きないの?いつものように頬を舐めて起こしてもハルトは目を覚まさない。見つめてくれない。頭を撫でてくれない。笑顔でおはようと言ってくれない。早く起きなさいよ。何日そうしてるつもりなのよ。最近は毎日朝も夜も茶色いつぶつぶばっかでまずいのよ。 私は毎日玄関で横たわるハルトの隣で寝た。一秒でもハルトと離れると何だか不安で、週一回の会議もサボった。 夜中にルナが窓からやってきたので私は鍵を開けてあげた。 「あんた今日の会議来なかったでしょ。いつも皆勤賞なのにどうしたの?」 ルナは心配そうに私に聞く。 「実はハルトが玄関で寝てそのまま起きないのよ」 私がそう言うとルナは部屋の中を見て少しギョッとした。そして、ハルトに近づいたと思うとそのまま帰って行った。 翌日、いつものようにハルトの隣で寝ていると目の前の玄関のドアが激しく叩かれた。 「お兄ちゃん!居たら返事して!お兄ちゃん!!」 ナツナちゃんの声だ。でも多分他にも大人が居る。だから私は「夫と二人居るわよ」とちゃんと返事をしたのだが、ナツナちゃん達は少しの間の後、鍵を開けて中に入ってきた。 その後はとにかく騒がしかった。ナツナちゃんは泣いているし、うるさい赤く光った白い四角い車が来たかと思うとナツナちゃんとハルトを勝手に連れて行った。しばらくすると私も変なかごに入れられてよく分からない場所へと連れて行かれた。 次にハルトに会ったのは黒い服を着た大勢の人たちに囲まれてだった。私はナツナちゃんに抱き上げられて、白い細長い箱を覗き込んだ。 そこにはハルトが居た。やっぱりまだ眠っていて、目を覚ましそうになかったが、家にいたときとは違い穏やかな顔をしていた。 私を見つめる愛おしそうな顔でも、おはようの笑顔でも、ちゅーの顔でも、おもちゃで遊ぶ私を見て笑う顔でも、ダンボールを開けて私を見つけたときの顔でも無かったけれど、間違いなくそれは私が大好きなハルトの顔だった。 だけど、ハルトとはそれ以降もう二度と会えなかった。 あの後はナツナちゃんの家へ帰ってしばらく一緒に暮らした。ナツナちゃんはやっぱり良い子だったし、ルナと過ごせるのは楽しかったし、イヌも面白かった。ご飯も美味しかったし何も不自由はなかった。 でも私はもう一度ハルトと会って、もう一度あの部屋でハルトと暮らしたかった。 その夜、夢の中でハルトと久しぶりに会った。たくさん撫でてもらった。たくさん色んな話をした。ハルトは楽しそうに私の言葉を聞いていた。 ぽかぽかとした空気に包まれた花畑をハルトと一緒に歩いた。 とても、とても幸せだ。 ―兄の春斗が急死し、兄が飼っていた猫の桜は私が引き取ることにした。寂しくならないように精一杯手を尽くしたが、兄を追いかけるように桜は2週間後に虹の橋を渡ってしまった。 だが、桜はとても幸せそうな表情をしていた。

みんなの答え

辛口の答え

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鳥肌たちました…

最初完全に夫婦の話だと思ってて途中から「お?」ってなったんですけど、最後読んでほんとに鳥肌立ちました!話の構成が上手くて羨ましいです…!ほんとに素敵な話でした!ありがとうございました!


そういうことなんだね

小説の主人公である私『私』は桜っていう猫なんだね。動物でも飼い主を心から愛してるんだろうな。 いいお話だと思います! ありがとう!


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