私はピーマンが嫌い
「うげっ、朝からピーマンかよ」 私はピーマンが嫌いだ。あの色も、苦さも、どうも苦手だ。 「真奈ー、速くしろよー」 由美が弾けるような声で叫ぶ。ちょっと待ってと私は返す。全部朝ごはんにピーマンが入ってたのが悪いんだ。私はご飯を無理矢理飲み込んでドアの外の青空へと駆け出した。 「真奈ってさー、好きな人とかいんの?」 由美はいつも恋バナばかりする。あんなに嫌いだって言ってんのにしつこいな。小学生の頃はゲームの話しかしなかったのに変わってしまったな、と思う。やっぱり吐き気がするほど気持ち悪い。やめてと言っても彼女の口は楽しそうに踊る。太陽のように輝く瞳に嫌悪感を覚えてしまう。 「あたし翔太好きでさー、わかる?C組の」 わかるに決まってんじゃん。それ私の幼馴染だよ?こんなことを言ってしまう自分も性格悪いよな、とつくづく思う。 中学生になって由美は変わった。休み時間のたびに前髪をせっせと直し、短いツインテールの髪はいつしかくるくる巻かれた背中までのロングになっていた。なんだか全く違う人間みたいだ。そういえば翔太も変わった。いつも見下ろしてたのに誰よりも背が高くなりやがって。ちんちくりんはいつのまにか私になっていた。声も低くなってまるで熊みたい。いつも遊んでいたのにすぐ付き合ってると思われるから迂闊に遊ぶことだって出来なくなった。 変わりたくない。気持ち悪い。青春なんていらない。 「真奈ー、聞いてんの?」 「気持ち悪い」 あ、やっちゃった。 「あ、ごめん、今日先行くわ」 私はその場から逃げるように走った。 あーあ、私って馬鹿みたい。みんなが当たり前に受け入れてることを受け入れられない。青春ってなんだそれ。思春期ってなんだそれ。大人はこんな気持ち悪いことに名前を付けて美化しないでよ。みんなが大人に近づこうとしててそれに足並みを揃えられないのがこんなに窮屈で苦しいの?大人になることに抗っても体は言うことを聞いてくれない。「大きくなったね」「背が伸びたね」「もうお姉さんだね」こんな言葉を聞くたびに嫌気がさしてその場から逃げ出したくなって、自分の写真を見るたびに気持ち悪くなる。写真に映る貴方は誰?写真の先には私が知らない自分がいる。その事実が受け止められない。 「はあ、はあ…」 呼吸が乱れる。気づけば私は近くの公園にいて、登校時間も過ぎていた。もういいや。どうでも良くなってブランコに浅く腰掛ける。こんなことしてるだけでも自分に酔ってる気がして気持ち悪いけど学校よりマシだ。もう疲れた。意識が遠のく感じがする。そして私は眠りについた。 夢の中には幼い頃の私が幼稚園にいた。私の腰のところに頭がある。彼女が私に気づいたのかこちらを見つめる。地面に小さなシミができ、やっと私が泣いていることに気がついた。 「だいじょうぶだよ」 彼女が呟いた。耐えられず、思わず地面にうずくまる。 「だいじょうぶ、だいじょうぶ」 彼女はおまじないのように繰り返す。チクリチクリと心が痛んだが、何故だかそれは心地よかった。 「もうだいじょうぶ?」 大丈夫ではないけど、私は頷く。彼女はくしゃりと笑い、私の意識は朧げになっていった。 目が覚めたとき、空は薄らと赤みがかり、時計を見ると5時を過ぎていた 「やらかした…」 まずいと思ったが、何故だか気分は清々しかった。別に今日で何か変わった訳でもない。でも、この胸の痛みを、気持ち悪いと言う感情を認めてあげようと思えた。 私はピーマンが嫌いだ。あの青色も、苦さも、まるで青春とか言う気持ち悪いものみたいで。でも、仕方ねぇから食べてやる。私は私なりに、青春を調理して、私味で。
みんなの答え
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すごい❣️
すごい
すごい!
やっほー! 陽奈だよ! とっても、すごかった! 最初と最後の話が似てて、主人公の心情の移り変わりがすごいよくわかる! では!
すご!
こんにちはっ!都姫です! これすごい好きです! 最初と最後が似た構造になっていて、主人公が夢のおかげで少し前向きになれたことがわかって感動しました 主人公にすごく共感する 成長するのは嬉しい気がするけどなんだか不安でモヤモヤして… こういう気持ちを言葉でわかりやすく表現できるのがすごいと思いました! 語彙力もさすが年上って感じです(中1かもしれないけど…) それではー♪