箱庭の楽園
『箱庭』 この世界は広すぎる、とつくづく思う。 誰と誰が友達で、誰と誰がライバルだとか。 そんなのどうでもいい。どうせ自分には関係ない。 そんなことより自分は、あの人だけを見ていたい。 ふんわりとした長い髪が美しいあの人を。 清らかな水の気配を纏う、いつも穏やかなあの人を。 誰かを守るためなら、自分が傷つくことも厭わない強いあの人を。 あの人が自分だけを見てくれるようになったら、どんなに嬉しいことか。 でも、そんなことはきっと無理なんだ。 だってあの人の側には、いつも大勢の人がいるから。 あの人は誰にでも好かれるから。 やっぱり、この世界は広すぎる。 この世界の隅っこを切り取った、小さな箱庭があればいいのに。 その箱庭では、自分とあの人の二人きり。 草木が生い茂り、花が咲き乱れ、暖かな光の降り注ぐ楽園で。 自分とあの人はいつまでも、いつまでも一緒に暮らすのだ。 『楽園』 この世界は狭すぎる、と不意に思った。 誰と誰が友達で、誰と誰がライバルだとか。 そんなことをもっと知りたい。私に関係がなくても、人同士の関わりは面白い。 そして私は、もっとあの子に外を見てほしい。 揺れるポニーテールが可愛らしいあの子に。 涼やかな風の気配を纏う、無愛想だけど面倒見の良いあの子に。 私を守るためなら、自分が傷つくことも厭わない優しいあの子に。 あの子が私以外にも目を向けてくれたら、どんなに嬉しいことか。 でも、もう後には戻れないのだ。 だってあの子は、誰の側にも寄ろうとしないから。 あの子は誰のことも好かないから。 やっぱり、この世界は狭すぎる。 あの世界の隅っこを切り取った、小さな楽園に私はいる。 その楽園では、私とあの子の二人きり。 草木が生い茂り、花が咲き乱れ、決して光の射さない箱庭で。 私とあの子はいつまでも、いつまでも一緒に暮らすのだ。