短編小説みんなの答え:7

甲子園、私たちの夏。

甲子園に憧れるのは、野球部だけじゃない。 私は吹奏楽部、トランペットのリーダー、松沢なほ。 浦塚高校は、高校野球の強豪校だ。 今年も地方大会で優勝。甲子園出場を果たし、1回戦、2回戦、3回戦、準々決勝と勝ち進んでいる。 高校3年生、最後の夏。 負ければそこで、私たちの夏は終わる。 だから、何度勝利しても、喜び飽きることはない。 ところで、出場する野球部のメンバーに、幼稚園からの幼なじみがいる。 高嶺浩司。 小さい頃から野球好きで、よくキャッチボールをしたものだ。 今や強豪校のスタメン、すっかりスポーツマン。 もう何度目かの晴れ舞台。 「かっ飛ばせー!こ、う、じ!こ、う、じ!こ、う、じ!」 何度もきいてきた応援を耳に、俺は息を大きく吸い込み、バットを握りなおした。 準決勝。勝てば決勝に進むことができる。 3対2で負けているが、まだ逆転の可能性はある。 だがもう9回ウラ。あと一つアウトになれば試合終了。浦塚は負ける。 大事な場面。緊張でバットを握る手が汗ばみ、心臓の音が激しくなる。 最後まで、ふりきらなければ。 私は、中学でトランペットを始めた。 公園で浩司の素振りを見届けながら、たくさんの曲を練習してきた。 吹奏楽コンクールは、今年も金賞をとったけど、県予選止まり。 浩司たちが、とっくに終わったはずの私の夏を、甲子園でつなげてくれている。 バッターが変わるごとに、応援歌も変える。 「See off」は、浩司がバットを握るときの曲だ。 曲はみんな何となくで決めるが、浩司は「この曲にしてほしい」と希望してきた。 勇ましくかっこいいメロディーがお気に入りなのだろう。 9回ウラの山場。浩司へのプレッシャーを想像するだけで、心が苦しくなる。 吹きすぎて、もう唇が限界。 でも、勝たなきゃ。 浩司を堂々と応援できる、この瞬間を1秒でも長く。 甲子園につれてきてくれてありがとう。 ずっとそばにいさせてくれてありがとう。 合図に合わせてトランペットをかまえ、想いをこめて、大きく息を吸った。 その時、「See off」が流れ始めた。 なほの音が大きくなった。トランペットは6人いるが、それでもなほだとわかった。 俺が打つときに吹いてくれとお願いした曲だ。 このメロディーを聴くと、試合で高ぶる気持ちを落ち着け、集中できるから。 …いや、なほが吹いてくれるからだ。 公園で汗を流す間、ずっと聴いてきた。 なほのトランペットの音は、なんというか、すごくキラキラしている。 特に「See off」が、なほを表す曲のように思えるから。 俺が休む間もずっと、なほは全力で応援している。 負けてられるかよ。 「さぁ、ビッチャー山本に3番高嶺がバットをかまえる!…打ったー!大きく大きく飛んでいく!キャプテン追いつくか?!…掴んだー!!スリーアウト!試合終了!3対2!激しい戦いを制し、北里学園が、7年ぶりの決勝進出を決めました!!」 ホームランかと思われた一球を、相手のキャプテンが奇跡的にキャッチ。 負けた。 ベンチから相手の選手たちが飛び出し、喜びを分かち合っている。 浦塚高校の夏は終わった。 なほと浩司はただ、ぼやけた視界から流れ落ちていく涙を感じていた。 「…浩司お疲れ!」 「あぁ、お疲れ」 「負けちゃったね」 「…ごめん、応援してくれたのに」 「そこは応援ありがとうって言うの!」 「…うん、ありがとう。あと…言わなきゃいけないことあったけど…今はいいや」 「もう引退で忙しくなるよ?今言ったら?」 「こんな情けないときに言えないって…」 「…なーにが情けないだ!今までの試合めちゃくちゃファインプレーしたし、この試合も最後までやりきったじゃん!かっ!…こよかったよ…?」 「!…1番ききたいセリフだったのに小さく言うな、もう一回」 「はあっ?!人がせっかく褒めたのに!」 「いーや聞こえなかった、最後まで言いきれって」 「急に元気出しちゃって!…はぁ、いいよ?!……すごくかっこよかったし、これからもかっこいいって思う…!」 「?…もう引退ってお前言ったろ?」 「だーかーら!!これからも浩司のこと好きでいるってこと!」 「?!…は、はぁ?俺もだし!」 「えっ?」 「ってか俺、その前からなほのこと好きだったから!」 「私のほうが長い!」 「いーや俺だね!!まず先に言うなよ!俺が言うつもりだったのに!」 「今はいいとか言ってたの浩司じゃん!」 甲子園。勝敗を下す残酷な場でありながら、少年少女は憧れ続ける。 その一試合一試合に、たくさんの熱い思いがつまっている。 学生時代の思い全てをかける者もいる。 それでも、これだけは言える。 夏の終わりは、青春の終わりではない。

みんなの答え

辛口の答え

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かんどぅ

G党&E党の ゆのだぉ。° …… 短編小説のみ ゆのです。° …… 大好きな甲子園 × 恋愛 で,素敵すぎます,,, めた感動;; ほんと, 真夏の青春 て感じ!! 全てが 設定されてて,,, ゆのサンにゎ かけません() ほんと, 感動しましたッ …… ばぁい


良かったです… !!

こんにちは( *´`* ) 短編小説コーナー復活したんだなぁと思いながら ざーっと眺めていたんですけど 最初に目に止まったのがこのお話で… !! 字数制限の中でここまで完結させられるの 凄いなぁと思いました 一人称の転換だったり 実況の人のセリフもスピード感だったり 臨場感半端なかったです笑 拙い感想でほんとごめんなさい (´;ω;`)


感動…!!!

こんにちわッ._*。 JS6のAmeですッ *本題* すごいっ…めっちゃ感動した…。 表現がすごすぎます!!! 読んでくれてあざます^~^ ばいちゃ~(^^#


めっちゃ感動した!!

こんちゃっ(^^♪花凜です(#^.^#) 【本題】 めっちゃ感動した!! 読んでくれてありがとう(*'ω'*)ばいちゃっ(^^♪


長い文ですごいですね

特に最後の言葉がいい! 長い文ですごいです 少ないですけど…


めっちゃ素敵!

始めてコメント出しますおみきです! すごく表現がいいと思いました! 「ぼやけた視界から流れ落ちていく涙」 って詩みたいでキレイ! なほちゃんと浩司くんが呆然としている感じが伝わって、読みやすくてすごいと思いました!


大感動!

ども、みーです! 久しぶりの浮上です! ーーーー本題ーーーー すごく感動しました。 夏の風物詩甲子園と恋愛が絡んでいて、めちゃ面白かったです。 学校の名前から人の名前まで、ちゃんと細かく書かれていて、読んだ時にその人の特徴とかがわかって、話の内容も手に汗握るというか…勝つ!って思ってたけど、負けちゃって…でもそこから告白のシーンになって、ちゃんと恋愛も完結していて、そして最後の言葉!あれには感動しかなかったです。癒月さんがそうやって感じたんじゃないかってぐらい、説得力というか…気持ちが伝わってきました。 夏の感動がまた、帰ってきました。 読ませていただき、あらがとうございました!


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