月にも、明日は分からない。
人生、悪いことがあればいいこともある。 そのことを、人生とんとん拍子というらしい。 私はずっとその言葉を信じて生きてきた。 今不幸な私には、とびきりの幸せがあるって。 だけど、最近それがわかんなくなってきた。 気がつけばテストには バツ印はだらけで、 いつのまにか自分にもバツ印 がつけられているように 感じた高校時代。 自分が大丈夫なのかも分からない まま社会に出て、 毎日会社では上司からいびられて コンビニ飯しか食べられないで 床に雑魚寝してる今。 このままで大丈夫か、 なんて考える私を 生暖かくなった床が甘やかす。 ずっとダラダラして いる時に、ふと思い出した。 「幸せって、待ってちゃダメだよ。」 なんだっけ、この言葉。 昔の記憶。 そうだ、幼稚園の友達だ。 名前は、なんて言ったっけ。忘れたな。 「人生って悪いことがあれば 幸せことがあるんだって!」 私がまだ小さい時友達にそう言ったら、 「前にパパが、幸せって待ってちゃ ダメなんだよって言ってたよ。」 と、その子は言った。 その先も何か言ってた気がするけど、 さすがにそこまでは覚えていない。 そんなことを考えていると、 スマホの目覚ましアラームが 鳴った。 もう会社に行くために 起きる時間だ。 私はすぐに着替えて、 電車に揉まれながら会社に行った。 会社ではお決まりの上司からのいびり。 そんな長い一日も終わって、 家に帰る。 駅まで乗り継いだ 自転車に乗って、 スーツ姿で夜風に当たる。 今日だけは寄り道しよう。 そんなことを考えて、 近くの川まで自転車を漕いだ。 すると、急にぐらっと視界が歪んだ。 大きな音と共に腰や足に打撃が加わる。 「いててて…」 どうやら自転車ごと川のふもとに 転がり落ちたらしい。 本当に毎日ついてないな、 と思いながら顔を上げると、 真っ暗な空に一つある、 大きな月に気がついた。 大きな、大きな月をもう少し 見てみようと思って、 川の近くの芝生に寝転んだ。 少しすると川の音や、 鈴虫の鳴き声に気がついた。 「月って、こんなに大きかったっけ…。」 そう呟いたのと同時に、 月にも、明日は分からないのかな、 と考えた。 そして、思い出した。 友達が言ってた言葉の続き。 「前にパパが、幸せって待ってちゃ ダメなんだよって言ってたよ。 幸せって、全部気づくことなんだって。 だから、幸せって今もあるのかもしれないね。」 昔は友達の言ってたことが よく分からなかったけど、 今ならきっと、わかる気がする。