幸せになろう
2月14日、18時。 待ち合わせをした公園で、私は彼に振られた。 彼の背中が遠ざかっていって、見えなくなって。 一人きりになると、自然と頬を涙が伝ってきた。 自分から告白したの初めてだよ。はは、振られちゃった。トラウマになりそう。 自暴自棄になって、受け取ってすらもらえなかった手作りのチョコレートを地面にたたきつけようと手を振り上げたとき__ 「唯!」 私の名前を呼ぶ声がして、同時に背後からどんっ、と衝撃が加わる。 驚いて振り返ると、後ろにいたのは親友の華だった。 「は、な...?え?見てたの?」 「見てたよ~?」 「来ないでって言ったのに」 「え?フリじゃなかったのあれ」 見ていたのなら振られたのも私が泣いていたのも知ってるはずなのに、華はニコニコと私の顔を覗き込んでくる。 暗くしないのが華らしくて優しくて、また涙が溢れだしてしまった。 目の前でぽろぽろと涙を溢す唯を見て、泣かせたあいつが許せないと思う。 同時に、今なら振り向かせられるかもしれない、と考える私もいた。 もちろん笑っていて欲しいけど、泣き顔すら美しくて愛おしくて。 思わずぎゅっと抱きしめてしまう。 私ずっと好きだったんだよ。でも、貴方が彼のことを好きだというから。ひたすらに愛を語るから。 幸せでいた欲しいから。私は身を引いた。 でもその彼が唯を幸せにできないのなら、我慢しなくていいよね。 唯を抱く手に力を込める。 「ねえ、唯」 「華」 縋るように名前を呼ぶ。呼ばれる。 「好きだったんだよ、そうやって泣けるくらいさ」 このまま抱きしめて、ずっと離さないでいたいくらい。 「楽しそうだったよ、恋してる唯」 見てるの、辛かったんだから。 「またさ、前向こう。新しい恋、探そ?」 探さなくても、目の前の、 「例えば、私とか」 「え...。は、はは、何言ってんの?」 動揺した声が聞こえる。私から離れようとするのを感じて、そうさせまいとまた力を込める。 「本気だよ、私は」 「冗談でしょ?キツイって」 「だから本気だって。ずっと好きだったんだよ。今もずっと」 「ど、ドッキリ大成功~!って?はは」 「私は、あんな風に振ったりしないから。離れないから。泣かせないから。幸せにするから!」 静寂が訪れる。 耐えかねて、口を開く。 「へへっ、私も振られちゃった感じ~?お揃いじゃん。じゃ、また明日!」 また明日なんて、あるわけないのにね。気持ち悪いでしょ、こんなの。 力が入っていた手をゆっくりと離すして、立ち去ろうとした。 刹那、 「待って!!」 泣き叫ぶような声が聞こえてきて、思わず振り返る。 「離れないでよ!」 また泣きじゃくりながら、縋るように叫ばれて、何も言えなくなった。 「幸せにするって、華ってばイケメン」 楽しそうな笑顔で言ってくる。 「幸せにしてくれるんでしょ?」 「っ...!うん」 咄嗟に頷くと、唯にとびきりの笑顔をおみまいされた。 「じゃ、華にしとくか」 振られた時にあんなこと言われちゃ勝てないよ。ずるい。 大好きだった彼に感じていたような、胸がそわそわするような温かくなるような不思議な気持ち。 幸せにする、なんて言われたらなんだか華が格好良く見えてきて、そんな気持ちになった。 「幸せにするから」 何回も言わないでよ。心臓が持たない。でも、そうじゃなくて。 「二人で、幸せになろう?」 「うん」 耳元で響く声が気持ちよかった。 一生、離さないからね。